□Let's start!
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『ひょええええええっ!!』

8月31日、夕方―
木之本家の2階から響き渡ったのは、そこに住む可憐な少女の声とは思えない、けたたましい叫び声。

もし、少女の兄である桃矢がリビングにいたとしたら、毎年恒例のアレか、と、眉を寄せるであろう。
『さくらのヤツ、今日で夏休みが終わりだというのに、まだ宿題が終わっていないんだな』、と。

残念ながら、彼は友人・雪兎とアルバイトに出ており、家の中には少女しかいなかった。
―表向きは。

『なんやなんや、なにかあったんか〜!!さくらぁ!!』
さくら、と呼ばれた少女の部屋に飛び込んだのは、一匹の黄色い生き物。
ぱっとみた雰囲気はぬいぐるみのようで、中には、お風呂のスポンジ、と表現するものもいる。
見た目は愛玩動物のようだが、これは仮の姿であり、本来の姿は「クロウカード」の守護者の一人、「封印の獣・ケルベロス」。
―ライオンに似た、ツバサの生えた獣なのである。

キッチンでお菓子を探ろうとしていた彼は、その背中にある小さな羽根をぱたぱた力強く羽ばたかせながら、声の主の元に飛んでいった。

『いったい、どなんしたんや、さくら?』
心配したケルベロスが、自室にいたさくらに声をかける。

『ケ、ケロちゃあん、こないでえ・・・』
なぜか鏡の前に座っていたさくらが、その問いに答えず顔を押さえてプルプルと振った。

―その拍子に、鏡がかたん、と落ちて。

あっ、手を伸ばしたさくらの顔を見たケルベロスが、思わず言った。

『さ、さくら・・・っ!どうしたんや、その髪は〜!?』
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