オハナシ
□Summer Vacation!
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☆花火大会☆
彼はいつも、
爽やかな風を身にまとっている。
長くすらりとした足で颯爽と歩く姿は、どんな季節も似合うけれど。
―とりわけ、初夏がぴったりな気がするのは、彼が夏生まれだろうか。
さくらは何より、自分の半歩先を行く彼の横顔が好きだった。
少し癖のある前髪を、風に揺らして。
強く前だけを見つめる大地の色をした瞳。
形の良い顎から首へと続く美しいライン。
つんと伸びた端正な鼻筋。
小狼くん…
男の子なのにっ、きれいだな…、
さくらはいつも、わざとワンテンポ遅れて歩きながら、斜め方向から彼の姿に見とれていた。
…なのに。
―遠くで、また大きな花が夜空に咲いた音が響いた。
空に映った朱色と橙色の大輪の灯が、小狼くんの顔に影を作り出している。
ちらり、
上目遣いで、どんな顔をしているんだろう、って様子を伺っても。
こうして肩を並べていたら…
…小狼くんのお顔、よくみえない、よっ。
眉をしかめたら、
カタン、
私の下駄が小さく音を鳴らす。
―原因は、この子。
赤い鼻緒の新しい下駄は、まだ履き慣れていなくて。
…いつもより、ゆっくりペースの歩きしかできない。
―二人で行こう…、昨日、小狼くんが誘ってくれた花火大会。
『小狼くんも、花火、好きなんだっ♪』
嬉しくて嬉しくて。
今年作ったばかりの、新しい浴衣をはりきって着たんだ。
―小狼くんに見せたくて。
でも…