オハナシ
□Summer Vacation!
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☆ゆびきり☆
『……』
ー私の指。
天に向かってかざしたら、目を開けていられないほどの眩しさ。
じぃ…と穴が空くほどみつめて、
…急に胸が苦しくなる。
『ゆびきりげ〜んまん…』
小さく歌ったら、昨夜のぬくもりが波のように押し寄せてきて…、
切なさに押し潰されそうになった。
『…小狼くん、』
…――
二人で歩く、テーマパーク。
1日めいいっぱい遊んで、気がついたら時刻は夕闇の時間だった。
昼間、明るく響いていた子どもたちのはしゃぎ声は通りすぎ、代わりに肩を寄せあったカップルが、イルミネーションが輝くアトラクションへと吸い込まれていく。
…もうそろそろ帰るぞ、そう言った小狼くんに、最後に1こだけっ!…そうお願いしたのは…
―観覧車。
空に向かって舞い上がる、小さなかごに二人―
眼下に広がる私たちの街は、まるで宝石箱をひっくり返したかのように煌めいていて。
―私はしばらく見とれていたんだ。
きらきら、きらきら、
瞬きするたびに、街の星がひとつ消えては移ろい・・・
急に襲ってきた寂しさを隠すように、私はつぶやいた。
『…こんな素敵な宝箱の中に、もし私が落っこちちゃったら、きっと見つけられないよねっ、』
向かい側の席で。
窓枠に頬杖をつきながら、街の明かりをみつめた小狼くんが。
・・・驚いたようにこっちをみる。
その、ふんわりした前髪の向こうにある、大地の色をした瞳。
意志の強い眉。
男の人にしては華奢な顎に、すっと伸びた鼻筋。
いつまでみていてもあきることのないその人が、強く、はっきりと言った。
『・・・オレが、必ず見つける』
―まっすぐな瞳とゆるぎない言葉に、私の気持ちが飲みこまれそうで。
もう、視線すら重ねることが出来ない。
切なさに、胸がきゅんとなる。
うん、私は小さくうなずくしかなかった。