オハナシ

□Summer Vacation!
32ページ/36ページ

☆ゆびきり☆

『……』

ー私の指。

天に向かってかざしたら、目を開けていられないほどの眩しさ。

じぃ…と穴が空くほどみつめて、

…急に胸が苦しくなる。

『ゆびきりげ〜んまん…』

小さく歌ったら、昨夜のぬくもりが波のように押し寄せてきて…、

切なさに押し潰されそうになった。

『…小狼くん、』


…――

二人で歩く、テーマパーク。

1日めいいっぱい遊んで、気がついたら時刻は夕闇の時間だった。

昼間、明るく響いていた子どもたちのはしゃぎ声は通りすぎ、代わりに肩を寄せあったカップルが、イルミネーションが輝くアトラクションへと吸い込まれていく。

…もうそろそろ帰るぞ、そう言った小狼くんに、最後に1こだけっ!…そうお願いしたのは…

―観覧車。

空に向かって舞い上がる、小さなかごに二人―


眼下に広がる私たちの街は、まるで宝石箱をひっくり返したかのように煌めいていて。

―私はしばらく見とれていたんだ。

きらきら、きらきら、

瞬きするたびに、街の星がひとつ消えては移ろい・・・

急に襲ってきた寂しさを隠すように、私はつぶやいた。

『…こんな素敵な宝箱の中に、もし私が落っこちちゃったら、きっと見つけられないよねっ、』

向かい側の席で。
窓枠に頬杖をつきながら、街の明かりをみつめた小狼くんが。

・・・驚いたようにこっちをみる。


その、ふんわりした前髪の向こうにある、大地の色をした瞳。

意志の強い眉。

男の人にしては華奢な顎に、すっと伸びた鼻筋。

いつまでみていてもあきることのないその人が、強く、はっきりと言った。


『・・・オレが、必ず見つける』

―まっすぐな瞳とゆるぎない言葉に、私の気持ちが飲みこまれそうで。

もう、視線すら重ねることが出来ない。

切なさに、胸がきゅんとなる。

うん、私は小さくうなずくしかなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ