オハナシ
□Summer Vacation!
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☆肝試し☆
『知世ちゃあん…ど、どこにいるのおぉ…』
私は汗ばむ手で冷たい懐中電灯を握りしめながら、さっきまでそばにいた知世ちゃんの姿を見つけようと必死だった。
暗くて前がよくみえない。
手探りで階段の手すりにつかまって昇る。
―背中に冷たいものが走ったような感覚。
視線の上にある薄暗い踊り場の壁には“3F”とかかれた古ぼけたプレート―
―夏祭りのメインイベント、毎年恒例、肝試し。
…ほ、ほんとは、イヤだったんだけど…っ
私はびくびくとすり足で階段を進む。
今年の肝試しは奈緒子ちゃんが企画立案で。
夜の廃墟となった学校が舞台。
友枝中の校内は、それなりの装飾を施され、さらに薄気味悪い雰囲気が漂っていた。
さくらちゃんでも楽しめるからっ♪
奈緒子ちゃんがそう言って何度もすすめるから…
仕方なく知世ちゃんと一緒に並んだ順番待ちの列―
『オレはお化け役、だ、』
・・・小狼くんがそう言ってたから。
闇の向こうにいるはずの…彼のぬくもりに。
私の胸が、急にドキッと音をたてた。