オハナシ
□とあるカードキャプターの日常。
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1、
≪80000(ハチマルマルマルマル)サマーイベント開催!≫
そう銘打ってあるカラフルなチラシをさくらの前に突き出したのは、数日前の放課後―
チアリーデング部の練習が終わったばかりの千春だった。
『ね、さくらちゃん。このイベント、一緒に行かない?』
『ほえ?』
爽やかな汗を真っ白に光るタオルでぬぐったさくらのどんぐりまなこが揺れる。
千春が差し出したチラシを手にとって、そこに書かれたキャッチコピーを声に出して読んだ。
『・・・お城で恋人との愛を深めましょう?・・・ってこれ、なあに?』
『なんかね、隣町の遊園地で、明後日から夏のイベントが始まるみたいなの、
それがすっごいおもしろいから、山崎君がさくらちゃんと李君も誘って行こうよって。』
千春は個人ロッカーを開き、練習用のポロシャツを脱ぎながらそう説明した。
『ほえ?でも千春ちゃんたちもデートでしょ?・・・一緒に行ってもいいのかなあ?』
『うん♪みんなで一緒の方が楽しいし、何より山崎君がさくらちゃんたちと行きたいみたい。』
千春はてきぱきと制服に着替えると、パタンとロッカーのドアを閉じてさくらの方へウインクした。
『ね?』
『う、うん、それなら・・・一緒に行く♪』
こくり、はちみつ色の髪を揺らしたさくらが、縦に大きく首を振った。
(遊園地かあ・・・♪)
夏服のブラウスに袖を通したさくらの脳裏に、涼しげなあの少年の微笑がよぎる。
「さくら、次はどれに乗る?」
「さくら、ほ、ほら・・・危ないから、・・・手を繋ごう、」
・・・そして、甘いボイスがさくらの耳をくすぐった。
「さ く ら、」
(・・ってっ、
はにゃん、はにゃんっ♪
何かステキなことが起こりそうな予感だよっ。)
はにゃ〜ん状態でにやけているさくらをみて、千春が不思議そうに首をかしげた。