オハナシ

□花粉症にご注意!
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『ほえ?いい匂い・・・?』

おはよう、いつものように教室に入り友人たちの輪に挨拶を交わしたさくらは、軽く鼻をくすぐった香りに首をかしげた。

『さくらちゃん、おはよう〜♪』

友枝中2年A組の教室はいつものようににぎやかな朝だった。
小さな輪の中から奈緒子のメガネが光り、こっちこっち!と手招きをする。

『おはようございます、さくらちゃん。・・・これはアロマオイルの香りですわ。』

『・・・アロマオイル?』
机に学生鞄を置くときょとんとした表情のさくらが、奈緒子の机にあった、青く光る遮光性のガラス瓶に目を注いだ。

『さくらちゃん、色々な香りがあるのよ、』
利佳はそういって自分が一番気に入ったというゼラニウムの小瓶を取り出す。
ローズに似た甘い香りとフレッシュなかんきつ系の香りが、大人と子どもの境界線にいる利佳にはしっくりときたようだった。

『私はスイートオレンジかな♪』
太陽の陽射しをいっぱいに浴びたその香りは、いつも元気な千春にピッタリで。

『私はやはり・・・』
そういって知世が手に取った香りは、一滴のオイルを作るのにバラの花が50個必要だといわれる、ローズだった。


『ほ、ほえ?それどうしたの??』

友人達の輪の中に入ってきたさくらが、椅子を引っ張りだしてきて、すとんと座る。
始業時間まではあと少しある、さくらは奈緒子の机をわくわくして覗き込んだ。

『私、最近ね、アロマテラピーにはまっているの。このオイルを使って芳香浴やマッサージをすると色々な効果があるのよ。』
そういって奈緒子は小さな紙袋からハート型のアロマキャンドルを取り出した。

『でね・・・これも作ったんだ♪』

『ほえ〜、すごいねえ!』

『この他にも、花粉症に効くペパーミントや、心を落ち着けるラベンダーとかもあるよ♪』

『知ってる知ってる!ラベンダーの香りは良く眠れるって、お母さんが言ってた!』
千春がきれいなキャンドルをうっとりと眺めた。

『そうなんだ・・・』
自分の寝室に灯る、柔らかなキャンドルの光―
ゆらゆらと影が揺れる様を想像しては、はう・・・とため息をついた。

さくらたちは瞳を輝かせて、机に並んだハートのキャンドルを手に取ってじっとみつめていた。


『おはよう!みんな』
わいわいおしゃべりの花が咲いている女の子達のそばへ、隣りのクラスの山崎が声をかけてきた。
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