オハナシ

□翼のないトリ
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1、


『…トリさん、何でずっとないているのかな?』


夕暮れの間際を歩く2つの影。

蜂蜜色の髪を夕陽に染めて、少女はぽつりと呟く。
耳をすますと、確かに低く、深く…木々が揺れる枝からその声が聴こえてくる。

『…仲間を呼んでいるのか…?それとも…』

少年はじっ…と、想像力を働かせて答える。

翠色の瞳を携えた美しい少女は、ほんわかとしながらも時々突拍子もない事を話し出す。

『…ううん。なんか…歌っているみたい…』


静かな、重い旋律。

すべての音が遠のく。

まるでこの地球上にひとりぼっちにされたようで…。大きく息を吸うと胸がきゅっ、としめつけられて…うまく呼吸ができない。

『さくら?』

すべすべしてそうな顔はいつもよりも透き通り…青白く見えて。自分よりもずっと下にあった瞳を覗きこむ―

…葉と白い羽を震わせて歌声の主が飛び立つ。

さくらは、つらそうに、ふと一呼吸おいて。

『ひとりぼっちなのかな…』

消え入りそうな声でつぶやいた。

『え?』

その声があまりにもはかなくて、小狼は聞き返すが・・・

『…ううん、何でもないっ!…行こっ、小狼くん!』


いつもと同じような桜色の頬に笑顔を咲かせたさくらの様子に、小狼はちょっとだけほっとしながらも、心の奥に生まれた不思議な予感を感じずにはおれなかった。
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