□記念日の誕生日。
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『今日は・・・っ♪』
さくらは羽根のついたペンを鞄から取り出すと、ピンク色のスケジュール帳に小さく何かを書き込んだ。

『・・・また、記念日か、』
あきれたような声で小狼が笑う。

『だって・・・小狼くんのお誕生日は明日だよ?』
さくらはそういうと、ふっと思い出したように先ほど食料品売り場で購入してきたケーキの材料を紙袋から出すと1つ1つ品定めしはじめた。

鼻歌でも歌い出しそうなくらい、かろやかに。

『・・・さくらの記念日はいったいいくつあるんだ?』
冷たく冷えた飲茶を1口喉に流し込むと、小狼はさくらのスケジュール帳を覗き込む。

『えっと、たくさんあるよ、』
だって、恋をしたら・・・毎日が記念日、だもん―

さくらは、まるっこい文字がぎっしり書き込んである数字のお部屋をニコニコしながら眺めた。

李家のリビングで―
開け放した窓からは、もうすぐやってくる夏休みの匂いを運んできていた。
カラン、繊細な細工を施したグラスでは、溶け出した氷たちが笑う。

『で、その記念日にはどんなものがあるんだ?』

『・・・う〜んと、』

パラパラとさくらが花の咲いているページをくくった。
『・・・○月○日、小狼くんと一緒に帰った記念日、○月△日、小狼くんとはじめてお出かけした日、○月□日、小狼くんと手を繋いだ記念日・・・』

『え?・・・そんなことも書いてあるのか、』
小狼が驚いたようにさくらの手元から顔を上げた。

うん、こくりうなずいてさくらが続けて読み上げる。
『・・・○月■日、小狼くんと一緒にお勉強をした記念日、○月☆日、小狼くんとはじめてキスした記念日、○月□日、小狼くんと・・・』

『・・・も、もういいっ、』
はじめはうんうんとうなずきながら聞いていた小狼だったが、記念日の内容がどきりとするものに変わってくると慌ててさくらの声を制した。

『ほえ・・・?』
さくらはそんな小狼の様子に小首を傾げる。
・・・まだまだ二人で過ごしてきた季節はいっぱいあるんだよ、小狼くんにも知ってもらいたいのにっ、
ちょっと頬を膨らませてさくらが異を唱えた。

『小狼くんと一緒なら・・・毎日が記念日だよ、』

翡翠色の瞳を不思議色にしてさくらがそう言った。
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