120000hit☆企画
□8、小狼は自分の気持ちに気づく。
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―数十分前。
王子とのクライマックスシーンのリハーサル中、
さくらの唇を他の男に奪われないようにと、舞台に飛び込んできた李小狼。
その衝動に任せて、小狼はあふれんばかりの想いと共に、
横たわる姫のつややかな唇に覆いかぶさった。
しかし、数秒後。
『しゃ、しゃおらん、くん??』
小狼は唇を重ねているはずのさくらの声が背後から聞こえてきたのに驚き、はっと我に帰ってその唇を離した。
自分の後ろにいたのは、
・・・間違いなく友枝中のジャージをきたさくらだった。
ジャージすら、可憐な少女にかかればファッション誌から出てきた洋服のようにかわいいのだから、気が抜けない。
『さ、さくら?』
小狼は、目を白黒させてその姿を上から下まで確認した。
そこに立っていたのは、やっぱりさくらだった。
『じゃ、じゃあっ、』
勢いに任せて自分がキスをしてしまったのは一体・・・?
小狼は事の次第に整理がつかず、ぐしゃぐしゃと頭をかきむしったが、
ごくりと唾を飲み込むと・・・横たわっている姫の方を見た。
『李君、やればできるじゃない?』
「ははははは」と笑う細い目。
はちみつ色の髪をしたカツラ。
友枝中のジャージ。
少し潤っている唇。
―そこで眠っていた姫は・・・山崎だった。
『うわあああああああああっっ!!!』
劇に関わるすべての人と愛しいさくらが固唾を飲んで見守る中、小狼は友人・山崎貴史にキスをしてしまったのだった。