オハナシ

□サプライズ☆サプライズ
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5月28日pm12:30−


『山崎君、こないねえ・・・』
さくらがイりんごジュースの紙パックをちゅーっと吸い込むと、小さく首をかしげる。


5月の昼下がりは暑いくらいで。
後2日、涼しげな夏服の登場をみんなが心待ちにしていた。


−中庭に集まった女の子たちが、小さなパーティを開く。

利佳の作ったクッキー、
知世が持ってきたサンドイッチ、
さくらと奈緒子で買ってきたポッキーにジュース。

水をまいたばかりの芝生には、キラキラした水滴を着飾ったシロツメクサが宴に花を添えていた。

仲間の中で一番に14歳を迎えた千春を皆で囲む。


教室から流れてくるのは、放送部員がDJをつとめるお昼の校内放送。
流行の曲からクラシックまで、生徒達のリクエスト曲を流してくれるという、お昼の楽しいひとときだ。

『さっき、李君と校庭の方に出て行ったのを見たんだけれど・・・』
利佳が細い指先を顎に当てて首をかしげると、

『・・・何かたくらんでいるわね、二人で。』
奈緒子が眼鏡を光らせて静かに言う。

『もうすぐいらっしゃいますわ、きっと。』
長い髪をゆるりとなびかせて知世が微笑した。

『・・・別にいいのよ、みんなにこ〜んなにステキなプレゼントももらったし♪』
そういって千春は、友人達からもらった可愛らしい袋を抱きしめ笑顔を作った。



『・・・ねえ千春ちゃん、いっちばんはじめの誕生日のこと、覚えている?』
そんな千春の姿に気づいているのだろうか、さくらがそう問う。

『はじめのたんじょうび・・・?』
クッキーをもごもごさせながら千春が考える。

『・・・そう、千春ちゃんが覚えている、初めての誕生日!』

う〜ん、そうだな・・・遠い記憶を辿りながら、千春が口を開いた。

『・・・多分、幼稚園の時かな・・・

幼稚園の誕生会で、5月生まれのコが前に出ることになって・・・

・・・誕生日会の時ってね、みんなの前で大人になったら何になりたいとか言った後に一人ずつお友達から王冠を渡されるんだけど、
それがちょっとだけおひめさま気分なんだよね〜。』

セピア色の思い出が少しずつ蘇ってくる、
千春は、はっ、と思い出したかのように手を叩くと、目を輝かせて言った。

『・・・そういえば、その時に王冠をかぶせてくれたのは、』

−ピンポンパンポーン♪

千春の声を遮るように、放送部員の呼び出しが鳴り響いた。
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