オハナシ

□花粉症にご注意!
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さくらの小さな胸が自分の背中に当る感触があった。
嫌でもその場所だけに、意識が集中していく。

小狼の背中を後ろから抱きしめてきたさくらに、小狼は窓を開けようと前にふみだしたままの姿勢で硬直する。

自分のお腹に回っているのは、まぎれもなくさくらの腕。
ぎゅう、その腕に力が入っていくのがよくわかった。

『さ、さくら?』
乾いた言葉が後ろの存在に向かって声をかける。

『・・・・・・』

返事の代わりに、さくらの柔らかな胸が激しく鼓動を打つのが背中を通してわかった。

ごくり、
そういえば、くしゃみのせいでのどが渇いていたような気がする、
鳴らした喉の音があまりに大きかったので、小狼は心の中で言い訳をした。

決して、さくらに欲情しているわけではない、んだ―


何も答えないさくらの手に、小狼はおずおずと自分の手を重ねる。

―いつもとはうって変わって冷たい手。
でも相変わらず白くすべすべした手の甲を、太い指でそっと触れた。

まるで幼い子の頭を撫でるかのように。


『しゃ、小狼くん・・・な、なんかね・・・さくら・・・へんなカンジなの・・・』

背中を通してこもった言葉が響いた。

『だ、だからっ、それは、キャンドルに別の香りがっ・・・』
はっとして、触れていた手から離れると、小狼は無理やり理性を取り戻そうとした。

おそらく思いっきり香りをかいでしまったために、さくらはオイルの副作用が出たのだろう。
濃い濃度での使用は頭痛や吐き気を起こすことがある、と聞いたことがある。

『・・・とにかく、キャンドルを消そう、』
そういってさくらのそばから離れようとした時、小狼には想像もつかなかったことが起こった。



『!?・・・』

急にさくらに腕を引っ張られた小狼は、そのままベットに押し倒された。


―次の瞬間、目に入ったのは、


潤んだ瞳に、

桜色の頬、

艶めくくちびると・・・


白い天井―
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