オハナシ
□花粉症にご注意!
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『おい、さくら!どうした!』
『ほええええ、なんでもないよ、
なんか・・・こう、この匂いがすっごく気持ちよくって・・・』
さくらがもう一度匂いをかごうと銀のトレイに鼻を近づけたが、足がもつれてその場に倒れそうになった。
『さくらっ!』
小狼がその細い肩を慌てて抱きとめる。
『はにゃ〜ん・・・なんか、・・・』
『な、なんだ、?』
『・・・なんか、変な感じ・・・』
『なにっ?』
へへへへへ・・・小狼の腕の中で、ふっとさくらの力が抜けた。
『おいっ、』
口元には笑みをたたえたままのさくらの姿を見て、小狼ははっとした。
やわらかく、やさしく、炎を揺らすキャンドル―
小狼は、集中して鼻をすすった。
―わずかに鼻を通りぬけたのはかいだことがある匂い。
それはおそらく締め切った保健室中に充満しているのだろう。
エキゾチックで、甘くて・・・官能的な花の香り・・・
『これは、もしかして!?』
それは小狼も何度か嗅いだことがある花の香りだった。
その香りはたしか、不安な状態をリラックスさせる効果があった。
一方で、催淫作用があるため、ある国では初夜を迎える新婚夫婦のベットにそのの花をまく風習があるともいわれているのだった
。
『おい、大丈夫か、』
とにかく窓を開けて新鮮な空気をいれよう、そう思った小狼は、とりあえず抱えていたさくらをベットの上まで運ぶと、そっと白いシーツの上におろした。
―が。
『・・・かないで、』
つんっ、制服の裾を弱々しい力がひっぱる。
それがさくらではない他の誰かがした行為だったら、きっと小狼は気づかなかっただろう。
さくらだからこそ、・・・小狼はハタ、と、その声の主の方へ振り返ろうとした。
『・・・え?』
『いかないで・・・小狼くんっ・・・』
◆◇◆◇◆