オハナシ
□花粉症にご注意!
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『・・・何で魔法を・・・?』
動揺した心が少し落ち着くと、小狼は小さい声で聞いた。
『アロマキャンドルの火をつけようと思って。』
『キャンドル?・・・ああ、さっき、三原たちが話してやつか。』
さくらはそういって銀色のトレイにのせたキャンドルを小狼の前に差し出した。
『お薬ないんでしょ?
・・・小狼くん、くしゃみとまらないし、味もわかんないっていってたし・・・
このままじゃ、授業にでるのも辛いよ。
・・・この匂い、花粉症にも効くって奈緒子ちゃんが言ってたんだ。だから・・・』
『だから、【火】を使ってキャンドルを灯したのか、』
はああ〜、小狼が頭を抱えて深くため息をついた。
『うん♪だって、ライターもマッチも持っていないし、私、火を使うには【火】さんにお願いしないと・・・
・・・小狼くんはすごいねえ、火を出したり、風さん呼んだりすぐにできるもんね♪
前にも、明かりの代わりに火を出してくれたよね、あの、テディベア展のとき・・・』
『・・・も、もういい、わかった、』
恥ずかしくて思い出したくない、
これ以上頬が熱くなってしまうのを避けるため、小狼はさくらの話を遮った。
『・・・とにかく、この匂いかいでみて!どうしてよくなるかわかんないけど、ぜったい大丈夫だからっ!』
『・・・鼻が効かないから匂いが分からないが・・・おそらくあれだな、昔から、解毒作用や消化促進に使われてきた葉だ。』
以前、民間療法を学んだ時に得た知識だ、古代エジプト人もミイラを作る際にアロマオイルを利用したという記述もあるくらい、
昔からあった療法である。
『・・・くわしいね、小狼くん、』
『くっしょんっ!』
小狼の代わりに、3つのくしゃみが返事をした。
『ほえっ!小狼くんっ、早く匂いかいでみて!』
『え・・・しかし・・・』
『すんごいいい匂いがするよ!こうやって、
えっと、すーはー、すーはーっ』
はりきったさくらが、大げさに香りを吸う真似をしてみせる。
『すーはー?』
『そう!すーはー、すーはーっ、
ほら、とってもいい匂いだよ、』
『そ、そうか・・・?鼻が詰まっていて、まったくわからないが・・・』
『ほえ?こんなにいい匂いなのに・・・?すーはー、すーはーっ』
『すーはー、すーはー?』
『すーはー、すーはー・・・ほえ?
なんかへんなカンジ・・・』
はにゃ〜ん♪頬が火照り始めたさくらの様子に、小狼はいつもと違うと感じた。