オハナシ

□Summer Vacation!
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『も、もう…はじまっちゃったねっ』
私はわざと明るい声で言った。

いつもの服にすればよかったかな、
そしたらいつもの小狼くんの歩くスピードに、ついて行けたのに…

そしたら、

いつもの横顔も、
小狼くんが好きな花火も、

一緒に見れたのに…


私は、しずしずとしか歩くことのできない、浴衣と下駄に悔やんだ。

また、小狼くんのスピードが緩む。

さっきより、ずっとゆっくり歩いてから。


急に、歩みを止めて、私の指先を掴まえた―


『…足、大丈夫か?』

『え…?』

私の笑顔が、中途半端に頬に残る。

夜になって、いくらかの涼しさを含んだ風が優しくその頬を撫でた。

きゅ、と握った私の手と小狼くんの手が、ゆっくりと同じぬくもりに変わってゆく。

『無理するな』

『な、何で…?』
もう、笑顔を作ることができない。


ただ小狼くんの、心配色の瞳を見上げる。

『…いつもと、歩くスピードが違うからだ、』
言葉を選んで、そう言ったのがわかった。

私が、足が痛いことを隠しているのも、本当は小狼くんにはお見通し、なんだよね…

だから、いつもと違う、歩幅で歩いてくれていたんだ…

…小狼くんには、かなわないな、

私は見えないように小さく笑って言った。

『足が…』

『…え?』

『足が痛いのぉ…』

へにゃ〜ん、私はその場に座り込んだ。

『おい、大丈夫か?』

心配している真剣な姿に、私は小さく謝る。

『―ごめんなさい小狼くん…。
せっかくの花火に間に合わなくて…

でも、私、どうしても新しい浴衣で小狼くんと一緒に花火がみたかったんだっ…』


そうしたら。

―いつものふくれっつら。

『ばかっ!

オレは、花火じゃなくて…
さくらと一緒にいたかったんだっ』

…パ―ンっ

―その頬が赤く染まっていたように見えたのは…
今空に昇った花たちの、まばゆいひかりのせい?
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