オハナシ

□Summer Vacation!
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☆待ち合わせ☆

いつもより、蒸し暑い一日だった。

―約束の時間は15時。
待ち合わせ場所は、友枝町商店街にある噴水の前。

…観たい映画があるんだっ、
夏休み、学校がないと毎日会えないんだもん、
必死に取り付けた約束―

これって、デート、て言うのかな…

私の頬が、とたんに熱くなる。


『やった、一番のり♪』
…小狼くんならきっと、15分前には来ているはずだからと、急ぎ足でお家を出た。
おかげで約束の時間より、少し早めに着いて。

…じっと見つめるのは、きっと小狼くんが駆けてくるはずの道。

今日観る予定の映画よりも楽しみなの、
小狼くんの表情、姿、仕草…
学校でいる時と違う、小狼くん。

…待ちきれなくて、背伸びをしたら。
カタン、夏色のミュールが小さく笑った。


―…
『ほえ!雷っ!?』
私の頭上に、小さく稲光が走った。
薄暗い雲が、みるみるうちに身体を大きくさせていく。
冷たい匂いを乗せた風が頬を撫でてから過ぎ去る。

…まもなく落ちてきたのは、ポツンポツンという音。

『雨…?』
今朝のお天気お姉さんは、傘は必要ない、て言ってたのに…

天に向けた私の手のひらに、容赦なく雨粒が突き落とされた。

次第に音が増えていく―
みるみるうちに、目の前は暗い雨のカーテンが引かれて。

私は、噴水横にある植樹の下へ、あわてて駆け込んだ。

『ほえ〜、雷、怖いよっ』
すぐ上で稲妻が光輝く。
すぐに大きな音がかぶさって、私は耳をふさいだ。

―足早に過ぎ去る人々の影。
ゲリラ豪雨、という名にふさわしい激しい雨は、私の全身を余すことなく濡らしていく。

雨の中、一人―

耳をつんざく雷が落ちた様と胸をえぐられるような、苦しい雨音。

『……』

そう、私は無意識に呼んでいた、

きっと雨に足止めされ、答えるはずのない彼の名を…


『…小狼くんっ、』


『…さくらっ!』

耳を疑った。
意地悪な雨の声かと思った。

でも、その声は…

少しずつ、でもはっきり、
いつものように、私の名を呼んでいた―
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