オハナシ

□小狼♪Birthdayメモリアル♪
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『七夕』

「小狼くんへ

お元気ですか?

こちらは毎日雨ばかり降っています。

今日は七夕だから、お父さんとお兄ちゃんと折り紙で飾りを作りました。

短冊もつけて玄関に飾りました。」


小狼くんの…、

さくらは今しがた出したばかりの小包と手紙を想う。


不意に降りだした雨に、さくらは足を止める。

―用意していた人々が次々に開くカラフルな傘。

夜の街の、ショーウィンドウにその色たちがぼんやりに映る。

…いつか見た、小狼くんが住む街の彩り鮮やかな看板たちみたいだな。

その空の下にいる、だいすきな人を思い、胸がぎゅっと締め付けられる。


…小狼くんの、お願いごとはなあに?


さくらは、ぽつん、と言ったが、誰ひとり答えるものはいない。

…さっきから雨粒だけが、リズムよく音を奏でる。


七夕は、織姫と彦星が天の川を越えて年に一度会える日。

…ねえ、織姫は、
だいすきな人に会えない日々をどう過ごしたんだろう。

ずっとずっと泣いていた?
…それとも、会える日を指折り数えて待ち焦がれていた?


私、なら…

一緒に過ごした、大切な思い出のページをめくろうかな…


さくらは、雨に濡れた前髪を優しくすいて、その先から滴る雫をじっと見つめた。

真珠のようなその粒が、キラキラとこぼれ落ちていくたびに。

好きという気持ちが水かさを増していく―


私のお願いごと…

『…小狼くんに、会えますように』


雨の切れ間に
ふと見上げたら…


雲を切り取った夜空の向こうに、キラキラと瞬く星座たち―

まるでいつかの「灯」のように儚く煌めいて。


『あ…』


一瞬、
願いが叶う、ような気がした…





時々寂しくなるけど、大丈夫。
いつか必ず会えるって信じているから。
―いつかこの星空を小狼くんと二人でみたいな。



「小狼くん、
私は今日も元気です。」
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