オハナシ
□小狼♪Birthdayメモリアル♪
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『ラッピング』
『できたっ♪』
時刻は朝の5時半。
…結局、徹夜してしまった。
小さな窓から、朝の爽やかさが射し込んでいる。
さくらは出来上がったばかりの手作りのそれを、朝の光りにかざしてみて…
はにゃ〜ん♪、と、微笑む。
これを受け取った彼はどんな表情をするのだろう。
ぶっきらぼうに何か言うかな、それとも私だけにしか見せないあの笑顔が咲くかな、
思い巡らしては、小さな胸がくすぐったくなる。
今日、十数年前のこの瞬間に、大好きな人が生まれてきたこと。
そして、出会って…彼を好きになれたこと。
今日はすべてに感謝したい気分だ。
『よし♪仕上げっ』
さくらは机の上に置いてある、きれいな色した本を引き寄せる。
心のこもったラッピングも、プレゼントの一つですわ、と、さくらの大切な友人が貸してくれた。
本の中には、色とりどりの紙を美しく飾り付けた方法が載っており、写真の中でプレゼントを引き立てている。
『えっと…』
さくらは本とにらめっこしながら、グリーンとイエローの包装紙を重ね合わせる。
…器用な方ではない、けれど、まあある程度のことならできる。
料理や、最近では裁縫も。
…とはいえ、大好きな人にあげるとなると、やっぱり緊張するのだ。
カサカサと紙がすれる。
幾度かその音が繰り返されるが、しばらくすると、はあ〜というため息が重なった。
『はう…難しいよお。』
さくらは、眉を寄せて手元の包装紙を見つめる。
本を見比べながら、格闘すること数時間。
…もしかして手作りプレゼントより手間取ったかもしれない。
きゅっ…、と、透けた素材のリボンをやっときれいに結ぶことができると、さくらは、はうっ…と安堵の息をもらした。
『…できたっ』
…時計は、先ほど学校へ出発する時間を差したばかりで。
大変っ、遅刻しちゃう、
さくらはあわてて制服に着替えると、自分でも惚れ惚れするほどきれいにラッピングされたプレゼントを胸に抱いて、うちを飛び出した。
…思いがけないさくらのプレゼントに、小狼は目を丸くした。
そしてやっぱりぶっきらぼうに、でも心を込めて、ありがとう、と言ってくれた。
『小狼くん、喜んでくれたかなあ〜♪』
小狼と別れてから、さくらはなんともいえない幸福感でいっぱいになり、ウキウキした気分で自室の扉を開ける。
…小狼くん、びっくりしていたよね♪
今頃、お家で開けてみて、喜んでくれてるかなあ〜っ
はにゃん♪さくらが手で頬を包み込み、笑顔がこぼれ落ちそうになるのを感じた。
『…あれ?』
ふと…
目に入る。
あれは…?
思考がうまく働くのに、結構な時間を要した。
すべてがつながって、はじめて気づく。
自分のベッドの上にある、昨日まで一生懸命作っていた、それは…
『しゃ、小狼くんのプレゼントっ!?』
ラッピングに夢中で、プレゼントを入れるの、忘れちゃったっっ!
おそらく今頃、空っぽの箱をのぞきこみ、プレゼントの意味を一生懸命考えているであろう小狼の姿が思い浮かび…
さくらは、背筋に嫌な汗が流れるのを感じた。