大人向け

□たんぽぽのキス
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―『あ…』
我に帰ったように、さくらは急に上半身を起き上がらせて、手のひらを開いた。
湿気に濡れた小狼の瞳が一瞬面食らったように見開き、やがてさくらの手元を覗く。

『ご、ごめん…』

それは、たんぽぽさんに?…それとも私の唇に熱いキスを刻んだこと?
小狼くんのキスに夢中になってしまって…

―もう、戻れないよ。前の私に。

『さくら?』
お茶を手にした小狼が、さくらの顔を覗き込む。
その潤んだ瞳と赤みがかった頬を見て、小狼はごくりと小さく唾を呑み込む。
『…さくら、どうして欲しい?』
小狼がいじわるっぽく訊ねた。

小狼の制服の袖を軽く引っ張り、さくらが小声で答えた。
『ちゅう…したい、なっ…』
頬を桜色に染めて、目を合わそうとしない。

そんないとおしいさくらの誘いに、小狼は身震いを覚えて…
お約束のようにおでこを1回くっつけて、さくらの中を探るように深いキスをした―

『たんぽぽさん…』
『え?』
『綿毛に、なる…かな?』
甘くとろんとした表情のさくらが聞く。
『なるさ。たんぽぽは生命力が強いから』
ハチミツ色の髪をすきながら小狼は答える。

野に咲くたんぽぽみたいに、私ももっと、ずっと、好きでいたい…

さくらはもう一度、その虜になった、甘く深いキスをねだった。
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