大人向け
□たんぽぽのキス
2ページ/2ページ
―『あ…』
我に帰ったように、さくらは急に上半身を起き上がらせて、手のひらを開いた。
湿気に濡れた小狼の瞳が一瞬面食らったように見開き、やがてさくらの手元を覗く。
『ご、ごめん…』
それは、たんぽぽさんに?…それとも私の唇に熱いキスを刻んだこと?
小狼くんのキスに夢中になってしまって…
―もう、戻れないよ。前の私に。
『さくら?』
お茶を手にした小狼が、さくらの顔を覗き込む。
その潤んだ瞳と赤みがかった頬を見て、小狼はごくりと小さく唾を呑み込む。
『…さくら、どうして欲しい?』
小狼がいじわるっぽく訊ねた。
小狼の制服の袖を軽く引っ張り、さくらが小声で答えた。
『ちゅう…したい、なっ…』
頬を桜色に染めて、目を合わそうとしない。
そんないとおしいさくらの誘いに、小狼は身震いを覚えて…
お約束のようにおでこを1回くっつけて、さくらの中を探るように深いキスをした―
『たんぽぽさん…』
『え?』
『綿毛に、なる…かな?』
甘くとろんとした表情のさくらが聞く。
『なるさ。たんぽぽは生命力が強いから』
ハチミツ色の髪をすきながら小狼は答える。
野に咲くたんぽぽみたいに、私ももっと、ずっと、好きでいたい…
さくらはもう一度、その虜になった、甘く深いキスをねだった。