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□ミッション・クリア!
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ミッション 1、
その日、さくらはチアリーディング部の衣装を注文しに行くため、スポーツ用品店に寄ってから帰ると言っていた。
いつもならさくらの買い物に付き合う小狼だが、今日は先輩と一緒だから先に帰っていいよ、とお断りされてしまった。
確かに、彼女の買い物にまるで保護者のように彼氏がついていったのでは、後から何を噂されるかわかったもんじゃない。
夏の日差しがまぶしく差し込む教室の窓。
トントンと必要以上に教科書をそろえてから、小狼はへの字口のまま、横目でその姿を見送る。
―先輩の後をぴょんぴょんとついていくさくらが、窓の向こうのその視線に気がつき、ちらりと振り返り、つややかな唇が何かを告げていた。
『マタ、アシタ、ネ♪』
離れていても、少女の甘いボイスが耳に響く。
内緒話をするかのように、小さくひらひらと手を振る仕草が、まるで野に咲く可憐な花のようで。
小狼はその愛らしさに瞳をキョロキョロさせながら、怒ったようにそっぽをむいた。
そういうわけで、珍しく小狼は一人で教室を出る。
7月の日差しは、夕方に差しかかってもなお、サンサンと照りつける。
下駄箱から靴を出し、切り抜かれた昇降口からそそぐ夏の香りを、まぶしそうに見上げる。
…もうすっかり、夏、だな。
今年の夏休みの予定を、グルグルと頭にめぐらせながら、小狼が友枝中の校門に差し掛かったときに、よく知った影が姿をあらわした。
『李君。お待ちしておりましたわ。』
『…大道寺?』
そこには、今も変わらず、さくらの母と同じように豊かな髪をふわりとなびかせている、さくらの良き理解者、知世の姿があった。