■約束の日□

□神クラス
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『なるほど…!あれがX-LAWSのトップ――…』







ななしの見つめる先は威圧感漂う鉄の棺桶。


通称[鉄の処女(アイアンメイデン)]。






中世ヨーロッパで生まれた忌むべき拷問器具の1つで、罪人はこの懐に入れられ、トゲ付きの腕に抱き締められる……。


殆どの罪人はトゲによって、死に至る前に恐怖で自白するかショック死したと言われている。




まぁ、何故そのような拷問器具の中にわざわざ入っているのかは不明だが、果たして大丈夫なのかと少し心配に思ってしまう。





さすがはX-LAWSのボス。





侮れないな――…。









リング上では何やら揉めている様子で、司会であるラジムの頬を汗がだらだらとしたたり落ちるのが、こちらからでもはっきりとわかった。






『それにしてもあの子…』




ななしは視線をアイアンメイデンから緑色の髪の少年へと移した。






「ん?ななし嬢、何か言ったか?」




自分の中で言ったはずだったのだが、どうやら言葉に出ていたらしく、蒼に聞こえていたらしい。




『いや、ちょっと…あんな子いたかなと思って―…』





ななしは苦笑いをしながらも、緑色の髪の少年を見つめたまま話し始めた。




「そう言えば…確かに見ねぇ顔だな」




蒼も見覚えがないらしく、2人してうーんと考え込む。




と、そこへ――…






「それなら、少々お待ちを。」







考え込む2人とは反対に、燐がカバンをごそごそとあさり始めた。


ありました!と威勢のいい声と共に出てきたのは一冊のノート。



燐はそのノートをペラペラと捲ると、あるページでピタリと手を止めた。






「あっ!これですこれです!!

彼の名はリゼルグ・ダイゼル。アメリカ大陸に着いてからはずっと葉様達と一緒に行動していたらしいです。そうですね…X-LAWSに入ったのはここ最近です。」


どうやらそのノートは、燐がいつの間にか集めてきたシャーマン達のデータが書き込んであるらしい…。




何とも心強い。


さすがは燐。しっかりしている。





それにはまだ続きがあって――…と燐が言い掛けたところで、蒼が割り込み、声を上げた。






「おっ!つーか、葉様達どこにいるんだァ?さっきから見当たらないが――…」




そういえば、とななしは辺りを見渡す。いつも観戦している所に葉達がいない。

何かあったのかと不安に思いつつも、再び視線はリングへ。





さすがにもめ事も終わったようで、両チーム共に戦闘態勢に入ってるところだった。






「おーっと!リゼルグ選手ヤル気満々だあぁぁあ!

オラァアァア!それじゃあいくぜ!!シャーマンファイト!レディ―――!




ファイッッ!!!」








ラジムが声を張り上げた刹那、ナクトにリゼルグの攻撃がに当たり媒介を壊した。







会場がどよめく。




それはほんの一瞬の出来事で、みんな理解できなかったようで、動揺している。


まぁ、ななしにとっては今の攻撃はたいした事ではなく、理解するなど容易かったが。







『思ってたより、たいしたことないかも』





ななしは顎に手を当てて、じっと見つめながら呟いた。


X-LAWSの新人と聞いて、正直期待していたが、全くのハズレで、ななしは少し落胆した。






X-LAWSが勧誘した少年。
所詮ここまでか。


にしても何故こんな子を誘ったのか、X-LAWSもよく理解できない。









『あ…っ!ところで燐!さっき何か言い掛けてなかった?』




ななしはリゼルグから目を放すと、燐の方に向き直った。







「えっ…!あっ!そうでしたそうでした!」





と言いながら燐はさっき閉まったばかりのノートを再び取り出し、話し始めた。





「そのリゼルグと言う少年、8年前に両親を殺されています。」





燐は少し深刻そうな顔をしながらノートを見つめている。



ななしは目を伏せ、そう、とだけ返すと、再びリングへと視線を移した。






『その犯人、捕まったの?』





ななしはそのままの状態で話し掛ける。






「いえ…それが…その…」




急に口を濁した燐を横目でチラリと見る。


その瞳は早く言え、とそう急かしているようだった。



燐はため息を吐くと、重々しく口を開いた。










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