小説@

□眠り姫
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カーテンの隙間から、朝の光りが差し込んでいる。

平日の朝。

本来なら、そろそろ起きなければならない時間。

「のぞみ、起きるココ」

ココは肩を揺さぶり、今だにベッドで安らかに眠る少女を起こそうとした。

しかし、起きる気配はまるでない。

「遅刻するココ!」

更に激しく揺らすも効果は無かった。



しょうがない…

ココは人型に変身し、のぞみのベッドに片膝をついた。

顔を覗き込み、再び肩を揺らす。

「のぞみ…」

低い声、聞き慣れた声に一瞬のぞみは身じろぎする。

くすぐったいとでも言うように。

だけど、起きるまでには至らない。

ココは手の甲をのぞみの頬に当てる。

撫でるように頬から顎、首へと移動させる。

「ん…」

微かな反応。

体を捻る。

けれども、ココの手を逃がさない様にと腕を抱え込んでしまう。

のぞみの反応に、ココは頬を緩ませた。

もう片方の手で、のぞみの頬を包み込む。

その手に擦り寄る様に動くのぞみ。

「ん…」

起きそうで起きそうにない反応。

動く旅に微かにはだけるパジャマにどうしても目がいってしまう。

他にも目がいくのは、無防備で幸せそうなのぞみの顔。

ふっくらした唇。



そういえば、こんな話がある。

眠った姫を王子様がキスで目覚めさせる。



なかなか起きないのぞみを起こすには…

そこまで考えれば、後は簡単だった。

引き寄せられるように、だけどゆっくりココは自分の顔をのぞみに近づける。

体重をベッドに乗せていく。

のぞみの上に乗るように、自分の体を置く。

のぞみとの距離が近くなるに合わせ、ココはゆっくり目を閉じた。

あと、数センチ…



「ん〜っ…」

ぱっちり、何度か瞬きしながらのぞみは目を覚ました。

「……ぁっ」

「…………」

目の前に、ココがいる…

少し動けば、鼻も口も当たる位置。

ココの瞳が、のぞみの瞳が。

お互いを捉えて離さない。

状況がわかりつつあるのぞみは、みるみる顔を赤くする。

「なっ…ココ!?」

「おはよ、のぞみ」

なのに、ココはいつもの調子で挨拶する。

のぞみの上から静かに退ける。

驚きのあまり言葉を発せないらしいのぞみに笑顔で告げた。

「あまりにも起きるのが遅いから、キスしようと思ったんだ」

「はへっ!?」

「姫君はキスで目覚めるものだろう?」

意地悪な笑みに言葉に詰まってしまうのぞみだった。



2009・9・1
 
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