小説@

□セットの手伝い
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「おはよ〜っ!」

夏休みの朝。

のぞみは元気よく、ナッツハウスに入った。

「おはよう」

カウンターには店員のナッツが立っていて、のぞみに挨拶をする。

のぞみも返事をして、ナッツハウスの2階のいつもの集まり場に足を入れた。

「やあ、おはよう。のぞみ」

「おはよう、ココ!」

眩しいばかりの笑顔をココに向ける。

つられてココも笑顔で返す。

その時に、ココはある違和感を感じた。

「ん…?」

この違和感は何だろう?

のぞみを真正面から観察するように眺める。

一方、のぞみはいきなり黙りながらじろじろと自分を見るココに、首を傾げる。

「おーい、ココ〜?」

ココの顔の前で手をひらひら動かす。

その瞬間、ココは一人、ああそうか、違和感の招待に気がついた。

「のぞみ、髪型が…」

「へ?」

くすり、とココは笑いながら、のぞみに違和感の正体を告げた。

「のぞみ、左右の髪を括っている高さが違うよ」

「ええっ!?」

本当!?

のぞみは慌てて頭を抑えるが、正直、それだけでは位置がずれているのか分からなかった。

「うう…朝、ちゃんと鏡で見てきたんだけどなあ…」

走ってきたため、セットが乱れたんだろう。

自分で気がつかなかったことや、ココに指摘されたことで、ちょっと赤くなるのぞみ。

そんなのぞみを見て、ココは笑みを浮かべる。

慌てて括っている髪を解いているのぞみの後ろに立つ。

「えっ?」

何だろう、とのぞみが後ろを振り返る。

しかし、ココの手によって前を向かされた。

「…ココ?」

「僕がくくるよ」

そう言って、ココはのぞみのピンクの髪をクシを通していく。

いつもののぞみみたいに、左右で二つにくくろうとする。

しかし、慣れていないココには結構難しい。

(あれ…なかなか難しいな…)

何度かクシを使って整えようとするが、人の髪をくくった経験の少ないココには、なかなかの作業だった。

それでも、何度かやっているうちに、だんだん慣れてくる。

一方、のぞみは未だに顔を赤くしていた。

少しうつむき加減なのは、くくっていた位置がずれていた恥ずかしさだけじゃない。

ココに、くくって貰っているということが、何となく嬉しくて気恥ずかしかったから。

髪を触られているのが、頭を撫でてもらっているような感じがして、安心する。

でも、やっぱりくすぐったくて、恥ずかしいよお〜…

そんな葛藤を一人、心の中で行っていたのだった。



そして、その微笑ましい様子は、お茶を持ってきたナッツにしっかり目撃されており、後々来たリン達にからかわれることになった二人でした。



2009・8・18
 
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