小説@

□迎え
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放課後、学校での仕事が終わったココはふと外を見た。

空を見ると、朝の天気とはうって変わって、曇り空が広がっている。

いつ降りだしてもおかしくはない。

これは早々に帰ったほうがよさそうだな。

ココは急いで帰る支度をして職員玄関に向かった。



ついさっきは降っていなかったのに、ココが玄関に着くまでの間に降り出したようだ。

しかも、かなりの大降り。

傘無しで走って帰るには、ちょっと無理がある。

「仕方ないな…」

どうせ通り雨だと思い、止むまで少し待つ事にする。

いざとなったら、ココが傘を持っていないと知っているナッツが迎えに来てくれると考えた。

電話という手段もある。

ココは降ってくる雨の音に耳を傾けていた。






その時、

「ココーっ」

校門の方から、傘をさした声からして多分女の子がこっちに向かってくる。

この声は…

雨で視界が悪く、こちらに向かって来る人が誰か分からなかったが。

声を聞き、それが誰だかわかってきた。



「…のぞみ?」

「えへへっ」

「どうしたんだ?」

驚くココの目の前まで来て、のぞみは笑顔で言った。

「あのねっ、ココを迎えに来たの」

雨が降ってきたから。

ナッツがココは傘を持って行かなかったと言ったから。

「そうだったのか…」

「うん!」

雨の中のわざわざの迎え。

ココも驚きの顔から、笑顔になる。

「そっか…ありがとう、のぞみ」

「いいんだよ〜」

向かい合いながら、2人は笑いあった。





「それじゃあ、帰ろうよ」

そう言った、のぞみの体の動きが止まった。

手に持つ傘をじっと見ている。

「どうした、のぞみ?」

「あはは…傘、自分の持ってくるの忘れたちゃった…」

「え?」

のぞみは、ココの傘をさして迎えに来て、自分の傘を持ってくるのを忘れたのだった。

のぞみの話を聞いたココはひとつ息を吐く。

全く…のぞみらしいよ。

そう思うと、自然と笑いが出てきた。


「それじゃあ、今度は俺がのぞみを送るよ」

落ち込んでいるのぞみに傘を差し出し、自分の隣のスペースに入れる。

まじまじと見てくるのぞみに、一言ココは、

「傘は一つあれば大丈夫だろ?」

その言葉に、のぞみの表情が明るくなる。

「うんっ!」

のぞみのその言葉を合図に二人は歩き出したのだった。



2009・5・26
 
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