小説@

□寄り道
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「あ、クレープ屋があるよ」

学校からの帰り、公園でのぞみとりんはクレープの屋台を見つけた。

「本当だ。珍しいね」

そのまま通り過ぎようとしたりん。

しかし、横にいたのぞみはそのクレープ屋に釘付けだった。

屋台の中で忙しそうに生地を焼くおばさんに、目が固定されている。

「のぞみ、行くよ?」

りんの言葉に、のぞみは何かを訴えるような目を向ける。

もちろん、りんにはのぞみが何を訴えているのか、即分かった。

はいはい、クレープが食べたい訳ね…

呆れつつも、りんもクレープに興味があったため、折れるのはあっという間だった。

「折角だし食べていこうか」

「うんうん、そうこなくっちゃ!」

のぞみは既に食べることを考えていて。

りんの提案に、のぞみはやったと声を上げた。

さすがりんちゃん!

放課後でお腹が減っていたことや、甘いものの誘惑に2人は屋台にかけ寄る。

「わー、りんちゃん。いっぱいあるね」

「何にしようか悩んじゃうよ」

メニューを見ながら、うーんと唸る。

思っていた以上の種類の多さに、真剣に悩み始める。

「うーん…チョコもおいしそうだけどイチゴも捨てがたいし…あ!バナナもいいなあ〜」

「のぞみ…太るから1つにしときなよ…」

口に出したもの全て頼みそうな勢いののぞみに、りんは軽く釘を打つ。

その言葉に解ってるよ、とのぞみは軽く頬を膨らませた。


しばらくメニューの前で唸っていたため、不審な目を向けた人も多かったみたいだが…

何とか注文する品が決まった2人。

「よーしっ、おばさん。あたしはイチゴクレープ」

「あたしはチョコクレープ、お願い」

2人の注文に、屋台のおばさんはにこりと頷き、生地を焼きにかかった。

鉄板に薄くのばされた焼かれている生地から、ふわりと甘い匂いが漂う。

「りんちゃん、おいしそうな匂いがしてきたね」

「うーん、早く食べたいよ」

おばさんは、手際良く生地を焼き、その上に生クリームやイチゴ、チョコと盛りつけしていく。

「はい、お待ちどうさん」

「わーい、ありがとう」

「ありがとっ」

2人は代金を支払い、クレープを受け取った。



食べながら、帰り途を歩く。

「おいしいね、りんちゃん」

「たまにはこういう寄り道もいいかもね」

「うんうん。だけど、みんなには内緒だね」

2人だけでクレープを食べたこと。

きっと、みんなうらやましがるだろうから。

「ナッツハウスに着くまでには食べ終わらないとね、のぞみ」

「大丈夫、おいしいものはすぐにお腹に入っちゃうもんねーっ」

そう言って、のぞみとりんは笑いあいながらナッツハウスへと向かうのだった。



2009・5・24
 

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