赤い糸があるなんて思わない。
運命なんてあるなんて思えない。
赤い糸なんて、運命なんて、それはただ偶然が重なっただけで、
貴方に会う運命だった、だとか、
貴方とは赤い糸で繋がっている、だとか。
所詮それはただの勘違い。
そう考えていれば、離れてしまったときにあまり傷つかないような気がして。
偶然好きになって、偶然好きになってくれて、
そして偶然別れてしまったのだと。
偶然だから、仕方ないのだと。

小さなことで喧嘩をするたび、
まばたきをしたら零れてしまいそうな涙を浮かべてそう思う。




魔理沙が、私以外の子を可愛いと言った。
あまりにその子のことを楽しそうに話すから、
可愛いと褒めるから。

「魔理沙って本当に私のこと好きなの?」

これを聞くことが、どんなに勇気がいることか。
ただ、少し不安になったから聞いただけなのに。
あなたが私を不安にさせたから聞いてしまったのに。

「私のこと、信じてないのか?」

溜息混じりに貴方は言った。
向けられる冷たい視線に、
ああ、またか
と、私も彼女に気付かれないように小さくため息を吐く。



「なんとか言ったら、なぁ霊夢」

彼女の声に、膝の上に置いたてのひらに力が入る。
なにを言っても怒るくせに。
どうせ私の話なんかちゃんと聞かないくせに。
自分ばっかり言いたいことを言って。

魔理沙は、自分の言う通りにする霊夢しかいらないのね。
自分の思い通りにならない霊夢なんて好きじゃないのね。
いつもはあんなに優しいくせに、
貴方の言った通りにしなくなった途端に冷たくなる。

嫌われたくなくて、離れていってほしくなくて、
怒られたくなくて、捨てられたくなくて。
そう思ってるのは私だけ?
魔理沙はどうでもいいの?
私のことなんて、どうでもいいの?
どうでもいいから簡単に怒るの?

本当は、私のこと好きなの、なんて聞きたくなかった。
嫌い、と、
好きじゃないと言われたときが怖いから。
立ち直れなくなりそうなほどに、怖いから。
怖い思いをした上にこうして怒られて、
私はどうして
どうしてまだ魔理沙を好きでいるのかしら。

信じてほしかったら私以外の子を可愛いといわないで

言いたい言葉は言えずに、
私はごめんなさい、と呟く。
私まで怒ったら、この喧嘩が終わらなくなってしまう。
別れることになってしまう。
この先ずっと一緒に居られるなんて思ってはいないけれど、
どうしてもまだ、別れるのは怖いの。
だから言いたいことがあっても我慢しなきゃいけない。
私が我慢して謝らなければ、喧嘩別れをしてしまう。
そんなのは嫌なの。
元に戻りたいの。
そのために、我慢を
しなきゃいけないの

「ごめんなさい、もう疑ったりしないから、本当にごめんなさい」

分かってほしいのは、
私だって我慢をしてるということ。
あなたにこれ以上怒られるのが嫌で、
我慢をしてること。

つらいよ

言いたいことも言えず、我慢して付き合うことに
なんの意味があるというの。

それでもまだ私はあなたが好きで
離れてほしくないから
自分でも馬鹿だと思うけれど我慢をするしかなくて

嫌だな、弱くて

長く一緒にいるほうが、離れたときに辛いのは分かっているのに。
それでもまだ一緒に居たいのだともがく

偶然だから、なんて
本当は思いたくないの

こんな思いをするくらいなら
恋なんてしたくなかった







 
     





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