あなたに求める5つのこと

□キスして
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*キスして


「兄さん」

アルの顔が近づいてきて、キスされると思って目を閉じた。
だが、数秒経っても唇が重ねられない。

「…?」

片目を薄く開けて、目の前にいるはずのアルを見た。
何かを確かめたかのような冷たい表情に、唇の端だけ持ち上げた微笑。
駄目だ、これはやばい。
アルがこういう表情の時は絶対オレの困るような事をしてくる。
ここは逃げた方がいいと直感した。

「ア、ア、アル…!そうだ、オレ、まだ片付けなきゃならない書類があって…」
「そんな見え透いた嘘つかなくても大丈夫だよ?」

にこりと笑うが、その目は笑っていない。
何が大丈夫なんだろう…

「あ…じゃあ、オレ部屋行くわ」

生成りの、肌触りのいいカバーが掛かっている2人掛けのソファーから立ち上がろうとした瞬間、視界がひっくり返った。
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