退廃今昔物語
□番町皿屋敷
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むかし、江戸は番町の或るお屋敷に、える、といふ美しい小姓がおりました。
えるが下町を闊歩したれば、町中の若い娘やおかみさんが萌え悶えるほどの「男の色気」が漂うのでした。
黒く豊かな髪は風に靡いて、長身の背を曲げつつ過ぎる、えるの着物姿は男ですら惚れ惚れさせたほど。
これほど人を魅了する伊達男・えるですが、誰にも目をくれず、誰のくどきにも落ちず、ただただ飄々と指をくわえながら屋敷でのお勤めに励む毎日なのでした。
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