退廃今昔物語
□嵐ヶ丘
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時は19世紀半ば。
マンチェスターに程近い荒野に立つ荒れ果てた館、それはいつの頃からか【嵐が丘】と呼ばれていた。
ある吹雪の夜、道に迷った旅人 模木と相沢が【嵐が丘】にたどり着いた。
「嵐が止むまで泊めてもらえないか」と頼む 模木と相沢に、【嵐が丘】の主人ビヨンド・バースディは不機嫌そうに「・・・いいだろう」と答えた。
二人は下男の魅上に部屋まで案内されたのだが、その部屋はビヨンド・バースディが新婚時代に使った部屋で、四十年近くも使われていないのだという。
確かに荒れ果てた部屋だ。
大切な思い出があるならば、手入れもゆき届かせるだろうに・・・と、相沢が呟く。
模木は早々と寝てしまい、相沢も寝ようとした時だった。
強い風が窓を開閉させ、相沢が閉めようと窓に近づくと・・・
『ビ・・・ヨン・・ド・・・ビヨンド・・・私です・・・Lです・・・』
と外から青年の声がした。
模木もそれを聞き、起きて窓を閉めようとすると・・・手に何か冷たいものが触った。
そして白い吹雪の中、確かに青年の姿が浮かんでいるのを二人は見たのだった・・・。