退廃今昔物語

□番町皿屋敷
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勤勉で可憐なえるは、殿様の「いい人」だったのです。



若くて麗しい びよ殿の寵愛を一身に受ける える。


「える、えるはおらぬか?!」
びよ殿様が愛しげに呼ぶ声に、連日はらわたを煮え繰り返していた者がおりました。


下男の夜神月は、びよ殿様に横恋慕していたのです。
いつか・・・お江戸一重宝される武士となり、衆道を極め、びよ殿様の寵愛を一身に受けるのは拙者なり。

そして・・・新世界の神となる!


・・・相変わらずです。


そんな破綻した妄想を抱く月には、松田桃太といふ手下がおりました。

月は、えるへのセコい嫌がらせをほとんど松田にやらせていたのですが、ある夜、びよ殿様とえるの逢瀬を目撃してしまい、えるをなんとか追放する術を模索し始めました。


「松田。昨夜は最悪な夜だった。えるが・・・えるが憎いぞ」


「月どの。えるが殿の寵愛を一身に戴く事は誰もが承知・・・」


「・・・いいや。認めぬ。認めぬぞ。松田。あのような下賎の生まれ、たかが孤児。それが殿とまぐわいおうて・・・くっ」

負けず嫌いの悔し涙が頬を伝う月。

「どのようにまぐわっていたんですかっ?」と、松田が興味津々で聞くと、
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