NATUME
□君と過ごす日々
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いつも
独りきりだった。
誕生日もクリスマスも授業参観
、遠足や運動会まで。
幼い時はそれが凄く寂しくて悲しかった。
だけど、だんだんそれが当たり前になって来ると
寂しさを感じなくなっていた。
レイコさんの遺品の友人帳を受け取ってからは
毎日が賑やかだ。
もちろん欝陶しい妖もいるけど
、おれの名前を呼んでくれる『友人』が出来た。
あと、ちょっと無能な用心棒も 。
「じゃあな、夏目」
「うん。今日はありがとう」
「どう致しまして。ちゃんと足、冷やしとけよ」
「あは、そうする」
家の玄関先まで自転車に乗せて連れて帰って貰ったおれは、遠ざかっていく友達の小さな背中をその姿が消えるまで見送った。
「ったく、用心棒のくせにおれに怪我を負わせるなんて、ホント信じられないよ」
「むむっ。あれはお前の運動神経の悪さから起きた事故だろう。私に責任を押し付けようとは……」
「なっ!あそこで先生が飛び掛かって来なければ、おれは転んで足を捻ることはなかった」
「飛び掛かってなぞおらんわ!」
「せっかく釣った魚も、籠が倒れて逃げちゃったし」
「私は取れたでかい魚をお前に見せてやろうと持っていっただけ」
「塔子さん、魚楽しみにしてるって言ってくれてたのに…」
「駆け寄った私に驚いて足元の岩にぶつかりよろけ、転んだのはお前の勝手じゃ」
「はぁ、魚はないし足は腫れてるし塔子さんになんて言おうかな?」
「だから……って、人の話を聞かんかっ!」
「て言うか、どうして釣について来たんだよ」
「川で泳いでいる魚を見ると猫の血が騒いで、ついつい仕留めたくなる」
「……今自分から猫だって認める発言したぞ」
「はっ!」
玄関の前で二人くだらない言い合いをしていると、中から優しい塔子さんの声が響いて来た。
「貴志くん?帰ったの?」
「はいっ、戻りましたぁ」
玄関のドアを開け、夏目は中へと入っていく。
そのあとをニャンコ先生が唯一手元に残っている1匹の魚を加えるついて入った。
この魚はもちろん夏目を怪我させてまで見せびらかせたかった自分の獲物だ。
そしてこの魚は焼かれ、先生の夕食となった。