◇ ◆ 薦 蓮 集 ◆ ◇
53件
【暁(竜崎×夜神月) (あかつき)】
「集中…してください」
苦しそうに眉根を寄せて懇願する竜崎。
冷淡にそれを眺める僕。
なぜだろう。最中に他へ気をとられることが多くなった。《僕》を構成する、魂の半分を永劫に喪ってからだ。
(僕は何してるんだ。あの子がひとりなのに…)
月くん! いきなり頬を張られた。何するんだ?! 怒りに満ちた目で、彼を睨み返した。
竜崎は、燃えるような眼差しで、僕を捉えると今まで見せたことのない淫猥な表情で
「もう私は、おまえのご機嫌伺いなどしない」
「やりたいようにやる。私の快楽を最優先に」
…戦慄が、走った。同時にある種の愉悦も。徹底的妄執。僕がこの男に望む唯一のことだ。
彼が触れた身体が熱い。溶けてしまいそうだ。全部舐めとってほしい。アイスのように。
「吸って…ください。かんでもいい」
ずっと僕の髪に触れていて。ずっとこのままで。腕の中で、眠り続けた…い…
――悪夢だァ!!!!!(うД`゚)ノ■
【芋(夜神月×マット) (いも)】
「いらっしゃ――あ、月さん!」
「久しぶりだね。マット…頑張ってるね」
店は丁度、暇な時間帯なのか、客は一人もいなかった。手っ取り早く、済ませてしまおうと思った。
「あ。俺、今お茶を――」「いいから。そこ座って」
彼は、とても勘が鋭い。メロがあえて何も言わなくとも、傍にいただけで、マットはメロの苦しみや悲しみを、全部理解してしまった…今、僕がここに来たというだけで、大方の予想はついたことだろう。
「――駄目です。絶対に!」「預けたものを返してくれ」会話の順序が、逆になってしまっている。
「預けたものは【芋】だ。憶えているだろう?」マットの表情が、陰鬱になった。だが、こんな子供に怯むわけにはいかない。
「ハッキリ言わせてもらう」「君は部外者だ」「あの子が――いない今、僕らと何の関係もない」…込み上がってくる、感情を抑えるのに精一杯だった。僕は、上手く言えただろうか。
「――今、取ってきます」無表情のマットが、奥に引っ込んだ。結構、大荷物だったので、慎重に駐車場まで運んでもらった。
「俺は、許せない」…帰り際、マットが一言だけ呟いた。僕は笑って、彼の髪をくしゃっと撫でた。
「…ありがとう。じゃあね」
という夢を見た。《最後の望み》は叶ったよ、メロ。彼は、無関係だ。
【溟(竜崎×夜神月) (うみ)】
耳元で囁かれたら、もうだめだ。「…わか、った」という以外、ない。
注意ぶかく、慎重に奥まで到達すると、彼は一切動かなくなった。
「…?」「――私が、わかりますか」「…ああ」「僕を想って」「脈打っている」
次の瞬間、絶大な快感の波に襲われた。「…竜崎!早く、早く動いて」「動きませんよ?」「何で…燃えるように、体が熱いんだ」「おまえだって動きたいはずなのに」
「月くん」ラ・イ・ト・く・ん。その振動だけで気も狂わんばかりだった。僕の全てが、《それ》に集約されてしまっている。竜崎は僕を見つめ、口元を歪めて笑っていたが、相当の我慢をしているはずだ。
だが彼も、僕を強く抱きしめると「愛しています」とだけ、苦しそうに呟いた。僕は――その先は、何も憶えていない。ただ、しがみついていた。決して離さないように。
という夢を見た。どうしたらいいのかわからない。
【海(竜崎×夜神月) (うみ)】
「私と、しませんか?」
唐突で毎回すみません、と竜崎は形ばかりの恐縮をみせた。「別に、いいけど」…断る理由も見つからない。
つつみ込まれるようなキスを何度もされた。もうそれだけで、僕の背筋に快感が幾重にも走る。1分前には、こいつのことなんて何とも思っていないのに、もう今は、彼だけでいっぱいになる。彼以外は、考えられない。
「…………」
竜崎も同じなのかもしれない。脱がされただけで、もう挿入の体勢になっている。
「…おい、それは無いだろう」
「南島の性戯を試します。大丈夫、安心してください」
【溟(竜崎×夜神月) (うみ)】に続く⇒
【駅(竜崎×夜神月) (えき)】
「竜崎…竜崎…竜崎…」
月くん、月くん。向こうも熱に浮かされたように、何度も呪文をかけてくる。
実際、してみて分かったことだが、最中は「君の瞳が綺麗」だの、「可愛い唇」とか言うことは、まずなかった。
聞こえてくるのは、互いの息遣いと、うわごとみたいに名前を呼ぶ音だけ。
声の高低と、交わす目線で、相手の希求するものを知る。(まるで真剣勝負だ)
2人で、同じ終着駅への途を辿る。旅のようでもある、と思った。
こいつが腹の中で、
何を考えているか知らないが
僕は、彼でなければ駄目だと分かった。
彼以外、誰ともこんなことしたくない。
という夢を見た。最悪すぐる↓↓◯∠\_
【鬼(竜崎×夜神月) (おに)】
「この家は、2人だけです」
食事の後片付けをしていると、突然竜崎がそう言い出した。「? だから何だ」
「私と、月くんしか」…空気が一変した。緩慢な動作で立ち上がると、徐々に僕の方へ近づいてきた。
(…逃げなくては!)急いでその場を離れ、今回は和室にある押し入れの上に駆け登った。
暗闇の中で息を殺して、彼を待つ。(待つ? どうして…)その1分後に、竜崎はもう和室に到着した(ような、気配を感じた)。
鼻を、スンと鳴らす音がする。これは彼特有の癖で、たぶん僕と和室の匂いを、嗅ぎ分けているんだと思う…僕の匂い、って一体《何!?》どこの?髪?それとも――
…色々考えだすと、恥ずかしさと息苦しさでたまらなくなった。(早く、早く見つけてほしい)(嫌だ!絶対負けたくない)相反する気持ちがせめぎ合う。
「――見つけました。私の勝ちです」
押し入れの戸が開かれると、目映い光が差し込んだ。竜崎は腕をいっぱい伸ばして、僕を引っ張り出すと、「月くんまで、失いたくない――」
きつく抱き締められた。竜崎は泣いていた。僕は…この男になら《何をされてもいい》し、この男のためなら《何でもやる》。
憎悪が、激憤が、ある一点を目指して、沸々と体中を駆け巡る。見えない力が満ち溢れる。
という夢を見た。ことにする、今はな。
【鏡(竜崎×夜神月) (かがみ)】
「僕は、お前が大嫌いだ」
ついに言ってしまった。僕はこいつの珍妙な言動の数々を、ずっと我慢してきた。
「奇遇ですね。本音を言えば、私も嫌いです」
なんだって? あらゆる努力を重ねて円満な人間関係を構築しようとした(本来の意図は、それを遥かに逸脱したものだが)僕に向かって、そう放言した。
「そっ、か……似た者同士と言うわけだな」
なぜか胸の痛みを少し感じて、乾いた笑みを浮かべた。彼は僕を見つめ、決して目を逸らさなかった。
「…どうです? 苦しいでしょう。おまえの苦しみは、私の苦しみ。だから言ったのです。《嫌いだ》と」
ま、待ってくれ! それなら言う。今すぐに!!
「冗談だよ。竜崎は、僕の大切な人だ」
「奇遇ですね? 本音を言えば、そんなに私も嫌ではありません。寧ろ好きです。寝食を共にしたい。《永遠に》」
…という夢……じゃなかった!!!!!(笑)
【叫(夜神月×京子) (きょう)】
「――芋煮会、という手もあります」
「焼き芋大会では、どうしても広範囲に、無関係の方達まで、煙り等でご迷惑をおかけしてしまう欠点がありますが、」
「一方、芋煮会は関係者のみ集中するという、メリットがあります」
「しかし、大がかりになってしまうのが、難点とも言えます」
「別口で、ミサさんが提案されたスイートポテトというのがありますが、」
「これはその人限定で、最も理想的ではあります」
「しかし、小さすぎる。物足りないという、不満足な結果を得るかもしれません」
…京子の的確な説明に、全員が集中していた。彼女は父親ゆずりの頭脳明晰さで、「本当の天才なんじゃないか?!」と、僕も思うことがある。
以前、メンバー他と河原で芋煮会をやってみた。確かに大仰だった。目立って仕方がない。
《鍋》に、関係者が如何に集中するかが肝だ。材料次第、ということか…
という夢を見た。寒い冬にはやっぱりお鍋ですよね?
【轂(竜崎×夜神月) (くるま)】
「姫(秘め)はじめ、って知ってますか?」
百人一首、出来ます? のような、まるでかるたに誘うみたいな軽いノリで、竜崎が訊いてきた。僕は新春2度目の餅で、軽くむせった。
「ああ」「では…」「しないから」「皆と会った時点で、疲労困憊ってどうなんだよ?!」
只でさえ難攻不落なのに――今回は、戦局が全く見えない。メンバー他も休暇返上で頑張っている。(僕がしっかりしなくては…)
「あなたは、かぐや姫だ」「私を置いて、どこかに連れ去られてしまう…」しまった、屠蘇を飲ませすぎたか?(笑)
「竜崎、後15分で迎えの車が来る。支度急いでくれ」「私を、置いて行かないと――」(…どうしたんだ。この飲んだくれは?)「約束を――」
僕は笑った。「ああ」「飽きるまで、傍にいるよ」「全て終えたら、リンダの所へ――沖縄に行こう」
光を、目指すんだ。星を輝かせるものは、闇でも、夜でもない。溢れんばかりに満たされた、尽きることのない暖かな光、だけだ。
という夢を見た。僕らはそこに必ず、辿り着く。
【卿(宇崎洸×夕凪星) (けい)】
「“愛してる”という言葉が、嫌いです」
「愛も、iシテルも、藍色も、目のアイも、蜂(ホーネット)も、蜘蛛(スパイダー)も、雲も、クラウド・コンピューティングも――あ、雲雀恭弥は、私の一番のお気に入りですが」「そう…(僕は、山本武だけど)」
「獅子(ライオン)も、虎(タイガー)も、仮面(マスク)も、龍(ドラゴン)も、蛇(スネイク)も――全部、大嫌いです」
スポーツ好きの、前カレと何かあったのかな? と思いつつ、突如発祥(≒発症?)する竜崎のマイブームに合わせなくちゃ…と思った。
「じゃあ“愛してる”って、何て言えばいいの?」「“好き”で――めっちゃ好き、とか、惚れちょるけん、で。最近の私、方言萌えです」
「そうなの? 好き、だよ竜――あれ?“竜”の字入ってるけど、普通に呼んでいいの?」「それじゃあ“あきら”と…」彼は、眩しそうに目を細めた。
「好きだよ、あきら」「愛していますよ“せい”」――あれ? だけど舌を入れられたら、何がなんだか、もうわからない…
早く、早くベッドに連れていって。大好きでたまらない。おまえとだけ、分かち合いたいよ…「男を蕩かす、最高の肉体ですね」
そういう冗談、大っ嫌いだけど――大好きな彼だから、仕方ない。僕にできることは、何でもしてあげるんだ。
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