◇ ◆ 薦 蓮 集 ◆ ◇
【や】 1件
【社(竜崎×夜神月) (やしろ)】
「昨夜は、言い過ぎました」
殊勝な顔をして、竜崎が朝食の席についた。「月くんの事になると、頭に血が上って――」
「もう、いいよ」おはようのキスをした。「何年、一緒にいると思ってるの?」
彼は、大人しく和食に箸をつけた――そんなクールな外見で、低くて美い声をして、何が不安なの?
《愛してる…》食べる姿を見ながら、心で想った。おまえが喪ったもの、奪われたもの、必ず僕が《すべて取り戻す》。
不安なら、何度でも僕を試せよ竜崎。僕はおまえを、友人らを、僕らにかかわった全ての人達を、《決して裏切らない》――それが、僕にとっての最善の施策だ。
無尽蔵の有効案は、最上を取捨選択し難い。彼らが、僕らに決定打を与えられないのは、そのためだ。これはビジネスの基本戦略でもある。
だが、僕らは枷に嵌まる程、自分たちで活路を見いだし、切り拓く。自然に新たな道が、顕現するのだ――これが僕らと、彼らの決定的差異だ。
まだ勝機はある…強く抱きしめて、深く長いキスをした。《僕はこの男を守る》《この男は、僕の命だ》
「月くん? 良い知らせです…スペイン坂の彼が、力になってくれるそうですよ」
という夢を見た。ティエリ=モレロ氏と再び組めるなら、それが僕らの、また新たな力となる。
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