◇ ◆ 薦 蓮 集 ◆ ◇
【ま】 1件
【益(竜崎×夜神月) (ますます)】
「髪、切ってください」
読売新聞を床じゅうに敷き詰めて、彼は椅子で待っている。もうそんなに伸びたかな、と思う。
竜崎は、他人に触られるのが嫌いだ。だから病院くらいにしか、行かない。彼の髪は、ずっと僕がカットしてきたのだ。
ちなみにメロの髪も、僕が切ってあげた。竜崎を見て、俺も、と言ってきた。多分、欲しいものがあったのかもしれない。
「長さは変えずに、薄くしてください」「はい、わかりました」…何度もしている。もう慣れた。
手早く終える。「爪も、切ってください。あとマッサージも」「かしこまりました…」僕の提供し得る、最高のサーヴィスをいつも、おまえだけに――
いつも笑顔で、幸せでいて欲しい。そのためなら、僕は、どんなことでも――「月くん」…大きな瞳で、見つめていた。
「生涯、私のそばに。決して離れずに、いてください」
という夢を、見た。幸せで、嬉しくて、体じゅうから光が満ち溢れるような、至上の欣びだった――僕は、このために生まれてきたのだ、と知った。
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