◇ ◆ 薦 蓮 集 ◆ ◇
【と】 1件
【灯(夜神月×渋井丸拓男) (ともしび)】
「…これ。会社で使えるか?」
僕はまた、彼と帰路を共にしていた。渡されたのはキーケース。ブランド品だ――遊技場の景品で、今日は、頗る調子が良かったのだと言う。
自分の欲しいものと、換えたらいいのに…思うが、口に出さない。「とても役に立つよ。ありがとう」「フッヒヒw」
本当に、嬉しそうだ。僕はこの顔が見たいのだと思う――メロは警戒していたが、正直言うと、僕は、彼を愛しいとさえ思っている。
自分のことより、僕のためになる品を…とか。あと彼は、今もメロのために、箱チョコを渡し続けている――《変わらぬ善意》。そういう純粋な気持ちに、僕は、とても弱い。
ふと、魔が差した――キスしてみたい、と思った。小さな欲望だった。僕なりに何か、返礼したいと思ったのかもしれない。
「拓男。僕のこと好き?」「キスなら…してもいいよ」「あがッ?!(≒何)」――心底驚いたのだろう。彼は、頓狂な声を上げた。
夜とはいえ、人通りはまだ多い…「今ここで?」「そう」「ここでぇ?!」「(何故2回…)そうだよ」「えぇ〜? ラブホ行こうよラブホw」「(怒)馬鹿。男同士で入れるわけないだろ」――
おまえの負けだ。渋井丸…竜崎なら。人目を全く気にしない、彼ならあの場で1時間でも、僕の口を蹂躙し続けただろう。
という夢を見た。少しでも揺れた、僕が馬鹿だった。
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