◇ ◆ 薦 蓮 集 ◆ ◇


【そ】 1件

【穹(竜崎×夜神月) (そら)】


「ねぇ。僕のどこが好き?」

夕食の仕度時に、ネットランキングの話題をふってみた。彼は何て言ってくれるだろう。1位の『優しい』かな?『清潔感』?それとも…

「――――」

竜崎は、僕を一瞥しただけで、プロらしく料理の盛り付けに集中していた。サラダを整えると「――答えられません」とだけ、言った。

(…え?)

氷柱が、心臓を通過したようだった。答えられない、ってどういう意味? 僕に、好きな部分は、ないってこと…

彼はその間、ずっと僕を見ていた…やがて軽く溜息をつくと、「月くんは、私の目を好きだと言ってましたね」

「ああ」「では、不慮の事故等で目を失ったら、好きな箇所のない私を、もう愛さなくなるのですか?」

何を言いだすんだ、こいつは!! 「そんなこと…僕は離れたりしない! 僕が、おまえの目になる」…竜崎は、満足げに笑った。「だから、《答えられない》と言ったのです」



「だったら《全部好き》って言えば、良かったじゃないか」夕食後、思ったことを言ってみた。
「全部、なんて。そんな曖昧模糊な単語。はかり知れませんからね…」僕は《全部好き》、なのに?



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