◇ ◆ 茶 恋 詞 ◆ ◇


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【Gopal】
神が遣わした子供


「…明日さ、河原行こうぜw」

店の売上が悪いと、気分転換に決まってアイバーが、こう繰り出す。しかも、この時点で「誘い」ではない。既に決定事項だ。

竜崎を待ち、本を読んでいた部外者の僕が、席を外そうとすると…「馬鹿。お前も来んだよww」あのー、俺ら用事入ってて。私も明日、約束があって――等、他の従業員さんの言い訳を、適当に流しながら、「ああ、いいよ。お前らも、楽しめw」

「女を連れてくからな。頼んだぞ?」声を落として、話しかけてきた。「…何故、僕を?」「女ウケが、やたら良いから(笑)」――本気で、ムカついてきた。

自宅前に、迎車が来た。乗り込むともう、アイバーはよろしくやってる感じだった。後続の車を併せると、総勢20名ちょっと。歯科医とかも、いるらしい。

「俺らが、《最後の良心》だ…」仁さんが、熱く語り出した。「おっぱじめちまったら、《全力で阻止》するぞ。いいな?」そんなこと言っちゃってー。出目川さんには【最後のチャンス】かも、しんないですよw――拓男がさりげなく、酷い事を言った。

【Hattialli】
象の居る場所


「さー、着いたぞ。やっぱ空気が、うめえな?w」アイバーの一言で、最初はうんざりしていた僕も、キャンプみたいで楽しくなってきた。「BBQしたい奴。ビール飲みたい奴…まあ、適当にやっちゃってww」

「ねー。アイバーって、店では何もしないのに」「ここでは、すっごく働くよね?」――竜崎が笑いだした。「きっと、もっと女にモテたいんですよ」

おいこら。そこ聞こえてんぞ? 折角おいちゃんが肉、大盛りにしてやったのに…日頃、格好つけの彼も、開放感からかノリノリだ。

いつもお世話になっている御礼に、と僕らも焼そばを提供し始めた。屋台みたいで楽しかった――満天の星の、美しい夜だった。

【Jomoklungsma】
大地の母神


「プレゼントです」…いつも、何もかも突然だ。包装のない小瓶を手渡された。「包みは邪魔なので、剥いて捨てました」

この、かわいらしいデザイン…女物?「そうですが、香りが気に入って買ったんです――さぁ、纏ってみてください」

(いつになく、強引だなあ…)つけた最初は、白粉のような上品な匂いなのに、段々砂糖菓子みたいに、甘ったるく変わっていく。

「…焼菓子、みたいだ」あの時の――ベッドでした強引なキスを、ここでもされた。(いい匂い。気持ちいい…)天に昇るような幸福感に満たされた。

「大好き。ずっと一緒にいて?」ばかなことを、口走ってしまった――彼の心は自由で、同性同士。ただ、あんまり幸せだったので…醒めない夢を、永遠を願ってしまった。

「…………」上司のアイバーに心惹かれる彼は、少し困惑していた。だが、僕の耳朶に唇を寄せると、

「――私の、《本当に欲しい物》を手に入れて、彼を超えられたら、身も心も、月くんだけのものになりますよ…」低くて、甘い囁きだった。

【Kairbetta】
丘の頂上


本当に欲しい物――分かっている。それは、視線の向こうにいる、あの男を「超えること」だ。

だが、どうやって? 彼以上に稼ぐ? 僕は…心を込めて愛するし、決して裏切らないが、彼ほどの商才は、無い――

「…な、に睨んでんだよ? 怖い本でも、読んでるのか」注視に、我慢ならなくなったらしい。「僕、社長になりたい」「あなたの会社を、買収するんだ」

「はぁ?」大人の対応だった。「お前はそういうの、向かねえよ」「金が欲しいなら他を選びな」

一笑された。こういう所、か。僕にないもの――余裕というか、包容力。僕は、決断した…《彼の、すべてになる》。

彼の、父親にも、母親にも、祖父母にも。彼を取り巻き、愛するであろう人々のように《僕も、彼を愛する》。

僕が、あげられるもの全部、おしみなく彼に差しだそう。自分の命のように、彼を大切に守り、大事にする。それこそが《僕のできること》。それしか、できないけど…。

【Millikthong】
玉蜀黍の丘

【Mokalbari】
開放された土地

【Nagri】
女神パールバティー

【Nilgiri】
青い山

【Pengaree】
ペンガリー姫

【Poobong】
雲の谷

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