◇ ◆ 茶 恋 詞 ◆ ◇


【B】 1件

【Badamtam】
アーモンド


アイバーと竜崎は、すっごい仲が良い。正直僕は、心中おだやかではない気持ちで、見守っている。だけど確信もあった――「彼は、無類の女好き。絶対大丈夫」と。

竜崎は五感、特に嗅覚が優れていて、プロのソムリエから、何回もスカウトを受ける程だった。「私はウイスキー派。お断りします」と、いつも相手を烟に巻いていた。

ある日の食事会に、僕も同席を許された。たくさんの料理が並ぶ中で、アイバーが遅刻で現れた。僕らの横を通り過ぎた途端、

「香水、変えましたね?」…挑むような、眼差しだった。「シャンプーも。石鹸も」

殴られる! と思う程の、恐い形相で「――それ、(俺の)女に言ってみろ。馘首にしてやんぞ?」

だから、黙ってろよ? といつもの調子に戻して、談笑を続けた――「彼女にしたら、俺の全てを、暴かれそうだな(笑)」

その時、僕は、見てしまった。僕の大好きな、あの大きな瞳が、伏し目がちになって、陶酔しているのを…心臓を、えぐり出されたようだった。



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