◇ ◆ 薦 蓮 集 ◆ ◇


【お】 1件

【鬼(竜崎×夜神月) (おに)】


「この家は、2人だけです」

食事の後片付けをしていると、突然竜崎がそう言い出した。「? だから何だ」

「私と、月くんしか」…空気が一変した。緩慢な動作で立ち上がると、徐々に僕の方へ近づいてきた。

(…逃げなくては!)急いでその場を離れ、今回は和室にある押し入れの上に駆け登った。

暗闇の中で息を殺して、彼を待つ。(待つ? どうして…)その1分後に、竜崎はもう和室に到着した(ような、気配を感じた)。

鼻を、スンと鳴らす音がする。これは彼特有の癖で、たぶん僕と和室の匂いを、嗅ぎ分けているんだと思う…僕の匂い、って一体《何!?》どこの?髪?それとも――

…色々考えだすと、恥ずかしさと息苦しさでたまらなくなった。(早く、早く見つけてほしい)(嫌だ!絶対負けたくない)相反する気持ちがせめぎ合う。


「――見つけました。私の勝ちです」

押し入れの戸が開かれると、目映い光が差し込んだ。竜崎は腕をいっぱい伸ばして、僕を引っ張り出すと、「月くんまで、失いたくない――」

きつく抱き締められた。竜崎は泣いていた。僕は…この男になら《何をされてもいい》し、この男のためなら《何でもやる》。

憎悪が、激憤が、ある一点を目指して、沸々と体中を駆け巡る。見えない力が満ち溢れる。



という夢を見た。ことにする、今はな。



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