novel

□陽気に身を任せ
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今日は長月の11日。

嗚呼、僕はまた一歩、死に近付いた…
考えるだけで気分が優れず、暗くなってしまう。






時が止まればいいのに。

せめて、ゆっくり流れてくれればいいのに。











「はーんべ、誕生日おめでとーっ♪」
がさがさと庭の植え込みをかき分け、現れたのは僕の旧友――と言うのもなんだか不快だ、知り合い程度でいい――前田慶次。
「君ねぇ……ちゃんと正門から入ってっていつも言ってるじゃないか。」
「別に良いじゃねぇか、こっちのが近いし。」
肩についた葉を払いながら、慶次君が大声で答えた。
まったく、彼は人として常識がなってない。
つい、ため息が漏れた。
「……誕生日なのに何辛気臭い顔してんだよー。」
「それは君があまりにも……」
「いや、俺が来る前からだろ?お前が何を考えるかなんてお見通しだ。」
「……え。」
「誕生日って、スッゲー素敵な日なんだぜ?祝ってやるからもっと嬉しそうにしろっ!!」
笑顔の慶次君に、額を指で弾かれる。
……お見通し、か。
慶次君がそんな鋭い人だとは思えないけどね。
くすりと笑うと、慶次君は「そう!!それだよ!!!」と指を指して顔を綻ばせた。



人に指指すな。
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