Parfait〜友情編〜
□『プライド』上
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「でさ〜〜、竜士と薫が教室からいなくなった瞬間、アイツらすぐ態度変えんの!男としてどうよ?!ねぇ先生!!」
「それは子供じみた行動ですね……でも。」
先生はにっこり笑うとボクのほっぺたを器用に摘んで、ぐぐっと引っ張った。
「学校では、敬語を使って下さいね。それからプリント、全然進んでませんよ。」
「いひゃいいひゃい…!!」
放課後の国語準備室。
この間の抜き打ちテストで合格点をとれなかったボクは、只今綾川先生と居残り勉強中だ。
竜士とつるむようになり、綾川家によくお邪魔するようになってから、先生とは大分仲良しになった。
「だって先生、コレわかりません…」
「やれやれ。昨日、うちで草間くんに習っていたじゃないですか。」
「えっ、ウソ!!」
それならまだ覚えてるはず…
ボクはほっぺをさすりながら、しぶしぶプリントに戻る。
勉強は、あんまり得意じゃない。
まあ最近は、愛すべき生徒会長が専属でカテキョをしてくれてるから、かなり成績もマシになってきたけど…
「やっと終わった〜〜〜〜……」
ようやく問題を解き終えて、がっくりと机の上に潰れる。
先生はくすくす笑うと、コップを目の前に置いてくれた。
「え…」
「男子生徒にご褒美をあげるのは、初めてかもしれませんね…」
目の前に置かれたのは、アイスカフェオレとクッキー。
ボクの好きなものだ。
「やったーーー!!…って、女子にはいつも出すんですか?!」
「基本はコーヒーなんですけどね。内緒ですよ。」
全く悪びれずに、さらっと言う。
まじかーー…と思いつつも、特別待遇をしてもらえたのが嬉しくて、ボクは口元が緩みっぱなしだった。
「…まるで女の子みたいな反応ですね。」
「えっ!!」
「あはは、わかりやすくて私は好きですけどね。弟が君を好くのも、わかる気がします。」
先生は綺麗なカップでコーヒーを飲みながら笑った。
…竜士はいつも先生の文句ばっかり言ってるけど、本当は多分、男として尊敬しているんだと思う。
ボクにしても、それは同じだった。
先生は竜士とよく似て自由な人だけど、洞察力があって、すごい思い遣りがある。
少なくとも、ボクにとっては、家族の次に信頼出来る大人だった。
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