Parfait〜友情編〜
□『近付きたくて』
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「薫ーーー!!!大変だっ!!次ボクが当たるって!!」
4限の国語の授業前、駿が血相を変えて飛んできた。
「…当てられなくても、ちゃんと宿題はやっておけといつも言っているだろう。」
「やったけどわっかんないんだよ〜〜〜!全然だめ!!何で文法って国語に含まれるんだろう?!」
「…………。」
まともに答えるだけ無駄だな。
俺は仕方なく駿が指さす問題と、念の為にその前後の問題を教えてやった。
駿は決して飲み込みが早い方ではないが、きちんと教えれば素直に覚えようとする。
俺にしても、最近では駿に勉強を教えることが、良い復習方法として定着し始めていた。
「こうやれば良かったのか!!これならボクでも解けるっ!!」
大声で叫ぶと、周りにいた女子がくすくすと笑う。
たかが文法問題数問で、すべてを制覇したかのような喜びっぷり…。
「もう、薫は世界一のボクのカテキョだよ〜〜〜!!ちょー愛してるっ☆」
駿は勝手に盛り上がって叫ぶと、満面の笑みで俺に抱きついてきた。
「放してもらえないか…」
「もう、薫っちはシャイだな〜。」
朗らかに笑う駿を見て、俺は長い溜め息をついた。
始めはこういう一挙動一挙動に戸惑ったものだが、今やもう慣れたものだ。
「なぁーに朝からやってんだよ、気持ちわりぃ〜…」
竜士が重い足取りで教室に入ってきて、駿の頭をぐしゃっと押した。
「うぁっ!なにすんだよ!!」
「おはよう、竜士。」
「おーーっす…」
次は彼の兄…綾川先生の授業だ。
遅刻はもちろんのこと、しょっちゅう授業をサボろうとする彼も、国語だけはなるべく出席している。
何も言わないけれど…よっぽど先生が怖いのだろう。
何となく、予想はつく。
「てか竜士、なに数学サボってんだよ!次はボクも誘え!」
「チビっ子は〜、俺と違ってちゃんと授業出なきゃ、全然わかんなくなるだろーが。そんな罪深いこと出来ねーよ。」
竜士はぽんぽんと駿の頭を叩いて席につく。
いつものように駿は悔しそうに反発し、子犬のように竜士の後をついて回った。
何気無い日常の風景。
それでもこの二人と付き合い始めてから、俺の生活はかなり華やいだように思う。
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