Parfait〜友情編〜
□『男と男のエトセトラ★』
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「ふぁーーっ…ねぇーみぃ…」
俺はエンドレスでリピート再生されているヘッドフォンを外して、思いっ切り体を伸ばした。
ここ一時間くらい、時間が止まってるみたいに変わらない眺め。
俺の向かい側に座っているチビ…駿は、相変わらずレポート用紙3分の1のところで止まったっきり、こくこくと頭を揺らして睡魔と戦っている。
一方テーブルの左側では、薫が飽きもせずに、難しい顔をしていた。
もっとも、こっちは俺が賭けに負けて嫌々適当に仕上げたレポートと自分のものを照合させ、“最も適切な”何やかんやを突き詰めているらしいけど。
「竜士。」
ふと顔を上げて、薫が問い掛けてくる。
「あぁ?」
「…ここ。途中式はどの方法を? 」
「めんどくせー…」
そう言いながらも、レポートを手にとって見直してみる…我ながらお人好しだ。
ってか、これまじメンドイやつじゃんか。
一瞬顔をしかめたけど、目の前には何の疑いもなく答えを待っている薫の顔があるだけ。
「めんどくさ過ぎる」なんて言ってコイツと無意味な討論になるくらいなら、観念してちょっと集中した方がまだマシだ。
俺は溜め息をついて手元に視線を落とし、ちょっと集中した。
「う〜〜ん…水色の……」
突然、もはや突っ伏している駿が呟いた。
頭を寄せ合っていた俺たちは、一瞬顔を上げて駿を見つめる。
「………すーー…」
これは寝息。
「はぁ?水色の、なんだよ…」
「……寝言だな。」
薫はすくっと立ち上がると、俺のベッドの上に丸まっていたタオルケットを勝手に取り、そっと駿の背中に掛けた。
「ママみてーだな。」
「部活で疲れてるんだろう。多少仮眠をとった方がいい。」
直接俺の軽口には取り合わず、薫は表情一つ変えずにテーブルに戻ってきた。
「……で、途中式は?」
「あぁ〜〜〜……」
我ながら、よくもまぁこんな異世界に住んでるような奴らとつるんでいるなと思う。
第一、バンド仲間と彼女以外の人間を自分の部屋に呼ぶようになったのはいつぶりだろう?
しかも、化学のレポートをやるため…なんて、ホント、多重人格にでもなったんじゃないかと自分でも疑わしい。
でも、実際はこうしてつるんでいるわけで……
まったく、キャラ違いもいいところだ。
俺は薫とサイアクなレポートをさっさと片付けると、駿を揺すった。
「おい、起きろよ。俺、これからバイトなんだけど…」
「…すーー………」
「お前なぁ…」
「熟睡しているな。」
薫は涼しい顔でそう言うと、すっと駿の下敷になっていたレポート用紙を抜き取った。
「仕方ない、残りの途中式までは書いておいてやろう。」
「お前、見掛けによらず面倒見いいよな。」
俺は呆れて肩をすくめると、ハンガーに掛けておいたジャケットを羽織った。
「じゃ、後は頼んだ。」
「ああ。すまないな。」
これが、最近よくあるパターン。
大抵駿が寝るか全く課題が終わらないかという理由で、俺の部屋だっつーのに、薫と駿が後に残る。
で、俺はバイトへ行き、先に兄貴が家に帰ってきたところで、薫が頭を下げて駿を連れて帰る…
兄貴も、何しろ不真面目だった弟が、真っ当な生徒会長とスポーツ少年と付き合ってるのが喜ばしいらしく、かなりアイツらに友好的だ。
本当、俺も丸くなったもんだ。
こんな風に落ち着いちまうなんてさ…。
「見て見て、美奈子チャンからお菓子ゲットしてきたっ!!」
翌日、教室で駿が俺の席の前でベラベラしゃべり始めた。
「これ春限定のチョコなんだって!ねね、薫も食べてみてよ!」
「ほう…苺か。さっきの授業は難しかったしな。糖分を摂るか。」
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