Parfait〜友情編〜

□『雨でも、ダメでも』
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「ねぇ…相葉くん、泣いてるのかな…」

「いやぁん、私もらい泣きしちゃいそ〜…」


試合はとっくに終わったし、雨も本降りになってきたってのに、周りのオーディエンスは動かない。



(そりゃそーだよな…)



原因は、アレ。



…駿が、雨でドロドロになったコートの真ん中に座り込み、膝に額を付けたままピクリとも動かない。


「……竜士。」


びしょ濡れで意味の無くなったメガネを外しながら、薫が不安気に俺を見てくる。


(そんな目で見るなよ〜…)


…と言いたいところだが、仕方がない。


どう考えても、これは俺の役回りっぽいしな…


顔を伝っていく雨をユニフォームで拭うと、意を決して駿に歩み寄った。


「……おい、駿。」

「………。」


あぁ、もう!!

どうすりゃいんだよ?!


「〜〜〜泣いてんじゃねーよっ、チビ!」

「………。」


頭をぐしゃぐしゃ撫でてみたものの、普段の「やめろっつの!」すら返ってこない。


……参った。










遡ること15分前。


学園行事・球技大会3日目…すなわち最終日。


午後は、各競技の決勝戦ラッシュだった。


で、俺はいつもなら適当に眺めてるんだけど…


今年は駿の影響で、クソ真面目にバスケをやることになっちまって。


こともあろうか、決勝戦に参戦する側に回っていた訳だ。


「1年のクセに…すぐ潰してやる。」


対戦相手は、3年の強豪チーム(らしい。どーでもいいけど…)


「あんなフェアプレー精神の無いチーム…ぜってー負けねぇ!!」


適当に流せばいーのに、売り言葉に買い言葉状態の駿。


「竜士、薫、ぜっっってーー勝つぞ!!」

「…ああ。」


お人好しの薫はなだめるように駿に頷き、俺にも無言のまま、視線でメッセージを送ってくる。

『竜士…駿のためにも、真面目にやれよ?』

『わぁ〜かったよ…』


俺は肩をすくめて視線を返し、ぐるぐる肩を回しながらコートに入って行った。


かくして、決勝戦が始まったんだけど…


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