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□only you
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蠍退治の時に奴らの情報を聞き出す為に呼び出したのは中学の頃の知り合いの古賀という男だった。
古賀は同じ中学だったが校内での派閥が違ってそこまで親しくはなく、でも時々顔を合わすと情報交換をよくしていた。

俺も古賀も情報を重視するタイプで、お互い違う縄張りの事を教え合うことで街の勢力図なんかを広く知ることができた。


中学卒業後は違う進路で、古賀は高校には行かないと言ったから立場も変わるし今までそんなに関わりがあったわけでもないからもう会うこともないだろうと思っていたのに、卒業式の日に古賀から連絡先を聞かれた。

鈴蘭の情報も欲しいからと古賀はそう言ったが、もっと古賀と仲のいい奴だって何人かは鈴蘭に行くのにそいつらに聞けばいいんじゃないだろうか。

そう思ったが教えたくない理由もなかったから連絡先を交換しあった。


だからか古賀とは卒業後の方がよく連絡を取るようになり、頻繁にメールのやり取りをしていた。

そのおかげで蠍の情報も入手できたしいい結果となった。


その古賀から、今度は自分から顔を出しに行くと行っていた通り蠍退治から二週間ほどした頃連絡があった。


飯でも食いに行こうと言われ、古賀の仕事上がりに合わせて駅前で待ち合わせをした。
一応俺も鈴蘭の幹部なわけだから当然絡まれやすく、駅前は人目につくからそれを避けて隅の方でタバコをふかしながら待っていたら後ろから頭を小突かれた。


「十希夫、なんつーとこにいるんだよ。探したじゃねぇか」
「絡まれると面倒だからな。それよりお疲れさん」
「おー。しっかし腹減ったわ」
「行きたいとこあんのか?」
「ないない、お決まりのガストでいいだろ」



駅前から歩いて十分ほどの、中学の頃から行きつけの店に着くと注文を済ませてようやく一息ついた。


「あのクソ蠍どもすっかり静かになったな」
「そりゃあな、ぼっこぼこにしてやったよ」
「あんだけタチ悪りぃの潰したんだからな、鈴蘭の原田がってしばらく噂んなってたぜ」
「なんて?」
「喧嘩できるんだなって」
「…殺すぞ、誰がそんなこと言った」
「まー、しゃーねぇって。お前は割と岩城さんの陰に隠れちまって実力見えなかったしな。俺は知ってたから当然だろって言っといてやったよ」
「そりゃどーも」


しばらくして運ばれてきた飯を突きながら話しは続いた。

「まぁ、軍司さんから比べられたら俺なんて霞むよな。未だにあの人には勝てる気がしねぇ」
「そーか?俺は結構いけると思うけどな。十希夫は岩城さんが絡むと過小評価しすぎじゃね」
「そうでもねーよ」
「いや、俺はお前の事見てたから分かる」


古賀はずいぶんとはっきりした口調で言い切った。何を言ってるんだろうか、時々しゃべるくらいだったし俺は古賀の喧嘩なんて2、3回くらいしか見たことがない。古賀だって俺の喧嘩なんてそれくらいのもんだろう。


「いつ俺の事見てたんだよ」
「いつも。いつも十希夫の事見てたぜ」

古賀は箸を置いて、急に真面目な顔になると真っ直ぐに俺を見た。

「何言ってんだ」
「俺と十希夫、そんなに関わりなかったと思ってるだろうけど俺はお前のことばっか見てた。卒業式ん時なんで連絡先聞いたか分かってねーだろ」
「そりゃ、情報交換」
「建前だっつーの。俺は十希夫と繋がりが欲しくて必死の思いで聞いたんだぞ」






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