Parallel

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秀吉は拗ねて向こうを向いている米崎に気付かれないようにそこからそっと離れる。すると、しばらくして自分の後ろが静かになった事に気付いた米崎は部屋の様子を伺うように起き上がった。


いつの間にか秀吉の姿がなくて部屋のあちこちを目で追うが見当たらない。

自分しかいない、しんとした空間で嫌でも思い出してしまうのはさっきの映画の内容。
何もなかったところに突如として起こる心霊現象が頭から離れず、びくびくしながらも一人ではもっと怖くて秀吉の姿を追って探した。


「秀吉、どこ?トイレ?」

言いながらトイレのドアを叩くが返事はない。ドアのあるとこは全て探したがどこにもいなかった。



黙ってコンビニにでも行ったのだろうかと思って、米崎は自分の胸に手を当てて大丈夫だと言い聞かしまたベットへと戻ろうとしたその時だった。


なぜか玄関のドアをコンコンとノックする音が聞こえてきた。
深夜の時分に秀吉の部屋を訪ねてくる人なんているのだろうか。そうだとしてもインターフォンはちゃんとあって、当然チャイムを鳴らすだろうに、米崎はさっきから止まないノックの音に怯えつつもドアの覗き窓にそっと目を寄せた。


しかしそこには誰の姿もない。きっと秀吉が脅かすために何か仕掛けているのだろうとは思ったけど、嫌でも映画の事が思い出されて冷静ではいられなかった。


「ひ、秀吉なんでしょ。鍵持ってるんだから入ってこれば?」


米崎は怖くてさすがに自分から鍵を開けることが出来なかった。

「……鍵、部屋に置いてったんだよ…開けてくれ」


ようやく、そう秀吉の声がして米崎は少し安心したが、部屋に鍵が置いてあるならドアの鍵は開いたままになっているはずではないだろうか。
鍵を持たずに出た秀吉が閉めれるはずはないし、米崎が閉めた覚えもない。


秀吉の企みとは分かっていても一度張り付いた恐怖を拭うことは中々できなくて、米崎は手を震わせながら鍵を開けてドアノブに手をかけた。


その瞬間勢いよくドアが開いて、何がなんだか分からない内に目の前が塞がれた。米崎は声を抑えることが出来ず悲鳴がマンションの廊下に響き渡った。


「バカッ!コメ声がでかすぎるぞ」

耳元で秀吉の声がして、視界が明るくなると米崎は秀吉に縋るように抱き着いた。
視界が塞がれたのはどうやら抱きしめられていたらしい。


「ひで…秀吉のばかぁ…うぅ〜……怖かった」


俯く米崎は時々しゃくり上げるほどボロボロと涙を零していて、秀吉はどうして米崎の泣き顔はこんなに加虐心をくすぐられるのか誰かに聞きたいくらいだった。


「かわいいな、コメ」
「黙れ…秀吉のドSなんとかしてよ……」
「だってコメを泣かしたいんだもんよ。お前がそんな顔するからだろ」
「顔は私のせいじゃないし」
「そんなドS野郎が好きなコメはドMだな」


秀吉がくすくす笑うから米崎は秀吉の頬を思いっきり左右に引っ張った。

「イッテェ!何すんだ」
「それはこっちのセリフ!秀吉なんて好きだけど嫌い!」


そう言い放って部屋の奥へ行ってしまった米崎の姿を追いつつ秀吉はあまりに子供じみた米崎のセリフに、ホント可愛い奴、と一人呟いた。





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