Parallel

□・
2ページ/3ページ

「そんなに泣くことかよ、俺が犯してるみたいじゃねぇか」
「ご、ごめ…うっ、く…」
「何かがダメなんだろ?何だよ」


乱暴したいわけではない。秀吉は落ち着かせるために優しい口調で聞いたが米崎は首を横に振った。
秀吉は少し考えてから米崎の頬を濡らす涙を拭ってやると目尻に触れるだけのキスを落とした。


「コメ、教えて。何がダメ?」

秀吉のとろけるような優しい声に胸の中心がくすぐられて米崎の涙はすぐにおさまった。目をそっと開けると今度は額にちゅっと口付けられる。

すっかり宥められた米崎は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でなんとか答えた。


「ガーター………着けてる、から……見られたら、恥ずかしくて死ぬ……」
「別に死にはしねーだろ」

とりあえず言うべき突っ込みはすかさずしたが、米崎からの意外な答えに秀吉は少し驚いた。

あまり女らしい物を好まない米崎は身につける物にほとんど装飾はなくとてもシンプルだ。たいていパンツスタイルだし化粧も薄い。(顔立ちがしっかりしているので薄化粧で充分映えるのだ)

そんな米崎がセクシャルな意味合いの強い女の象徴とも言えるようなガーターを身につけているなんて驚く他にはなかった。


「お前ガーターなんて着ける趣味あったのか?」
「しゅ、趣味って言うな!私はただ機能性だけで使ってるだけで…」
「マニアックなアイテムだろ」
「男には分からないけどちゃんと日常的な用途があるの。……もういいでしょ。脱いでくるからどいて」


米崎は秀吉の肩を軽く押しやって身を起こそうとしたが当然秀吉によって阻まれる。

「全部脱がなくていいからそれ見せろよ」

そう言うだろうとはかけら程には思っていたけど、本当に言われてしまって米崎は眉をひそめた。

「泣くほど嫌なのに何言ってんの」
「いい顔してたぜ。まあそんなに嫌なら脱がなきゃいけないようにすればいいだけの話しだ」


秀吉は米崎の背中と膝の下に手を添えるとそのまま横向きに抱き上げて浴室へと移動した。
まさか、また無理矢理脱がされるのかとひやりとしたが、その予想をはるかに超えて秀吉はとんでもないことに米崎をお湯を張った浴槽に落とし入れたのだ。

もうすぐ入るはずだったために用意してあって、本当はその時にガーターを脱いでしまう予定だった。


静かな浴室に、ばしゃんと大きな音が響いて水面が波立つ。
米崎は予想だにしない展開に目を丸くするばかりだった。呆然とした顔で秀吉を見上げると、いつものにやりとした笑いを浮かべている。

「な、脱がないわけにはいかねーだろ?」

米崎は呆れて言葉が出なかった。
逆らえないような鋭さを向けたかと思えば、まるで子供のような言い訳を作るこの男にはもう笑ってしまうしかないような気がして苦笑した。

そして一息ついてにっこりと笑って言ってやる。

「このサド野郎」
「綺麗な顔がセリフで台無しだぞ」
「なんとでも言え」


自分の中で何かが吹っ切れた米崎は浴槽から出て水浸しになったパンツを脱ぐと床にべしゃりと放り投げる。
秀吉の望み通りの姿になった米崎は、水が滴る髪を掻き上げて秀吉を見据えた。

「これで満足?」
「開き直ったな」
「思い通りにばっかいくと思うなよ」
「強がりも悪くないけどな。でも顔真っ赤だぜ」

震えてるし、と米崎の首筋に指を滑らせると肩がびくりと跳ねた。
恥ずかしいのを必死で我慢したのに米崎の思いとは裏腹に体は正直だった。

秀吉は腰に手を伸ばすとガーターベルトごと撫でて満足そうに笑う。
エロいな、と呟かれた米崎は恥ずかしさの我慢も限界で顔を隠すように俯くと頭を秀吉の胸に寄せた。

「……ねぇ、あんまり意地悪しないでよ…」

震えた声が弱々しく秀吉の耳に届いて、そんな米崎が愛おしくて堪らなかった。

秀吉は米崎の小さな肩を抱いて寄せて囁く。


「でも好きだろ?」
「好きじゃなかったらこんな性格の悪い奴とっくに別れてる」


咎められているはずなのに秀吉は笑いを堪えられなくて小さく笑うと、米崎からぺちっとかわいらし平手打ちを受けたのだった。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ