Parallel

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「裸になってコメの体見せて、今ここで」


正気とは思えないそんなセリフを言われたのは何の前触れもなく本当に唐突だった。
秀吉と米崎はテレビの前に並んで座って雑談をしながらバラエティ番組を見ていただけ。

これのどこかにそんなセリフに繋がることがあったのだろうか、米崎は全く理解できずに秀吉を凝視する。
目と目が合って米崎の疑問が秀吉に伝わるかと思ったが、秀吉は何も言わずにただじっと米崎の目を覗いていた。

「ほら、早く」

理由もないまま秀吉が催促をするから米崎はただ困惑するしかなかった。
そんな米崎を見て秀吉はとても満たされた気持ちになる。

きっと米崎の頭の中は秀吉の言うことをどう消化していいかでいっぱいだろう。そうして困った顔をして、それを自分がさせているのだと思うと秀吉は堪らなくなる。



秀吉はゆっくりとした手つきでソファーに座っていた米崎をその前に立たせて、手を取ってまるで小さい子に言い聞かせるように言った。

「コメはいい子だから俺の言うこと聞けるよな」


ニコリと微笑まれて米崎は身を固くする。笑顔なのに少しも柔らかさはなくて、まるで狩りをする眼光鋭い肉食獣のようだ。

どうして秀吉には逆らえないんだろう。
秀吉の声が、目が、見えない鎖のように縛りつけてくる。

米崎は厚く涙の膜が張った目でもう一度秀吉を見た。
その表情に秀吉は背筋がゾクッとした。

目のふちが熱で熟れたように赤く、瞳は涙に浮かんで揺れている。
困らせて困らせてどうしようにもできなくなった米崎がそんな顔でもう許してと請う姿に酷く興奮するのだ。そんなことをされても貴方が恋しいのだと態度で言う米崎に、どれだけ自分に溺れているのかと思い知らされる。


しかし今はまだその言葉は言わせない。
もっともっと追い込んで、行き場をなくした涙が溢れるように零す声が聞きたくて秀吉は先を促した。


「自分でできないなら脱がせるの手伝ってやろうか?」

秀吉が米崎の服の裾に手を忍ばせようとすると、米崎はそれを戸惑いがちに止める。

そんなことをされたら、もし途中でやめたくなっても抵抗ができなくなってしまう。
米崎は自分でやると言って酷く戸惑いがちな手つきで服を脱ぎ始めた。


もう何度となく体は交えているのだ。何も纏っていない姿を見られるのなんて少し堪えればすぐに終わる、と米崎は思ったがあっと思った時にはもう遅かった。

突然の秀吉の一言に困惑しすぎて気を取られていたが、上を脱ぎ終えてデニムパンツに手をかけようとしたその時に思い出した。絶対に下は脱げないと冷や汗が滲み出る。


米崎はウエストに手をかけたままの形で固まってしまい、秀吉はその異変にすぐ気付いた。

「どうした?コメ。手が止まってる」
「……秀吉ごめん、やっぱり、無理…」

弱々しく告げると、米崎は脱いでしまった上を手に取り直し首を横に振った。
ここまできて今更何を言い出すのかと秀吉は面白くない顔をして米崎に詰め寄る。

「何言ってんだよ。あともうちょっと脱ぐだけじゃねーか。できないなら手伝ってやるって言ってんだろ」

そして秀吉が手を伸ばすと、米崎は身をよじって絶対ダメだと言って秀吉の手を交わした。


その拒否の仕方に何かを感じた秀吉は米崎の手首を掴んで自分に引き寄せる。何故嫌でなくてダメなのか。恐らく隠したい事でもあるのだろうがそんなこと秀吉の知ったことではない。

秀吉は米崎をソファーに押し倒すと逃げられないように押さえ込んでデニムパンツに手をかけると途端に米崎の悲鳴に近い声が上がった。


「いやっ!やめて、秀吉!やだぁ…!!」

そしておさまっていたはずの涙が一気に溢れて頬を伝った。喉の奥がひくついてしゃくり上げるように泣く米崎を見てさすがに秀吉は押さえる力を緩める。







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