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□言えない言葉
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僕はサヨナラの意味を考えた


君の言葉の意味を考えた


それは別れようと言っているのかい?




僕と綱吉は恋人同士だった。帰り道も一緒で授業も応接室に連れ込みサボらせた。風紀委員長であるこの僕がそんなことをして言い訳がないのだけど、少しでも綱吉との時間を作りたかった。
そんな彼に呼び出されたのは昨日の放課後。屋上に来るように言われていた。僕が呼び出すことはよくあるが、綱吉からは初めてだった。僕は心踊らせていた。
屋上までの階段を上がり終え、扉を開ける。そこには既に綱吉がいた。


「綱吉...君が僕を呼ぶなんて珍しいじゃない。どうしたんだい?」


僕は後ろから綱吉に話しかけた。彼は直ぐに振り向き、悲しそうな顔をした。


「雲雀さん....俺...好きな人が出来たんです。だから....」


あまりのことに、この僕も驚いた。愛し合っていると思っていた相手に好きな人が出来た。状況から言ってその好きな人は僕ではない。僕は綱吉を離す気なんかさらさらない。なのに...


「そうかい。勝手にしなよ。」


思ってもみない言葉を口にしてしまった。


「ごめんなさい、さようなら。」


気づけばもう彼はそこにはいなかった。
僕は何も出来ずに屋上から外の景色を見ていた。
すると校庭を横切る綱吉がみえた。危なっかしい足取りで走っていた。あぁ転ぶなと思ったところでやはり転ぶ。いつも一緒だった帰り道を一人で辿らなくてはいけないんだと今更気がついた。
更に彼を目で追っていると、校門にいる奴。服装と髪型からいって六道骸であろう人のもとへ彼は駆け寄った。そして仲睦まじい雰囲気で下校していった。綱吉の好きな人が六道骸であると知って更に悲しみが増した。



僕はまだ君が好きだよ。


君のことを離さない。


言えない言葉が頭の中で木霊した。




〜end〜
 

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