――なぁ、お前は気付いているか?


ちらっとセナの顔を見る。




「?…どうしたの?」


俺の視線に気付いたセナは、少し心配そうな顔をしていた。




多分、今の俺の顔は、哀しそうな顔をしているんだろう。


笑いたいのに上手く笑うことが出来なくて、つい苦笑いになってしまう。



「もしかして、原因は私?」


「えっ、あ…ぃゃ…。」



彼女が言っていることはハズレてはいない…俺ははっきり否定することができなかった。

なんて情けないんだろう。

余計に彼女を心配させてしまった。




「ごめん。」




けど俺はそれしか言えなかった。



セナは自分のせいだったらと不安になってきているのか、少し青冷めてきている気がする。



今すぐ抱きしめてあげたい。


だけど俺はそれすら出来ないでいた。



俺が顔に出さなければ、こんな思いなんてさせなかったのに…。




俺はそんな自分に嫌気がさしてきた。


彼女にかける言葉が見つからない。



どうしていいかわからず、俯いて考えこんでいると、
セナが急に俺の方へ体制を変えた。










ぎゅっ。



「!!――」



突然のことに俺は呆気にとられた。

本当なら自分がしてあげるべきことなのに、今彼女は俺にそれをしている。



彼女が抱きしめる力がぐっと強まった。




「…ねぇシン、理由は聞かないけど…もし私が何か貴方にしたのなら本当にごめんなさい。」


「セナ…」


「私、よくわからないけど、何か大切なことを忘れているような気がするの…。」


「……」


「それがもしかしたら、貴方を…シンを苦しませているのかもしれない…。」




彼女は気付き始めている。


俺が隠そうとしても、


彼女の記憶は嘘をつかない。


それは少しずつ、


少しずつ



確かなものになっていく。







でもまだ早いんだ…


お前は







「―は何も知らなくて良いんだ。」


「えっ?…」


俺は彼女の疑問には答えず、

彼女の額に手を添えた。







知らない方が



きっと―…






「忘れろ。」














俺の腕の中で眠る少女―…





目覚めた時、

瞳に映る一人の男。



貴方は…誰?





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