虚域夕刻
□仮面の虚像
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体内時計が朝を感知し、ゆっくりと意識を覚醒させる。
殆ど寝れていない。
眠っていても凄く浅い眠りだ。
それは読心術を使えるリボーンを欺く為、睡眠時にも表層心理を取り繕わなければならないからで。
今も“ダメツナ”らしく寝坊する予定なので、寝ているフリをしながら同時に表層心理を取り繕っている。
表層心理と深層心理2つの相違した心情を動かすのは、短時間ならまだしも長時間していると流石に疲れるのだ。
それに加え寝たフリの三重苦を体験しつつ、昨日の出来事に綱吉は深層心理で深くため息を吐いた。
昨日。
あの後“ダメツナ”らしく適当にリボーンをあしらいながら遅い昼食を食べようと外に出れば、当然のようにリボーンはついてきた。
それにまたも“ダメツナ”らしく文句や罵倒を言いながら道を歩いて行けば、前方に笹川京子を発見。
調度学校が終わり、帰宅の時間らしい。
咄嗟に塀へ隠れたのは、綱吉じゃなく“ダメツナ”が学校のマドンナ的存在の彼女に憧れている設定だからであって。
(別に惚れてる設定でも良かったが、それはそれで後々面倒になると思い、憧れ止まりだ)
彼女が去った後、まんまと表層心理に騙されているリボーンに《死ぬ気弾》を撃たれた。
《死ぬ気弾》については父からの話と調べた情報で解っていた為、《死ぬ気弾》に後悔している事が【笹川京子に、友達になってほしいと言うべきだった】と認知させるのに疲れ。
成功させればその次は恥の嵐。
下着一枚で街を走り、持田とかいう名前だったような男と帰宅路を歩いている笹川京子へ半ば叫ぶように【友達になってくれ】宣言。
笹川京子には悲鳴をあげながら逃げられ、持田には殴られ、服は死ぬ気状態になった時に破けたから家までそのまま。
………(ダメツナとしては)最悪だ………。
俺としては多少外に出辛くなっただけで、別に何ともないんだが…。
そんな事を深層心理で思っていると、リボーンが綱吉を起こそうと蹴りを炸裂させてきた。
“ダメツナ”としてノーガードな綱吉はそれをモロに喰らい、ベッドの下に落ちる。
「いってーーー!!!何すんだよリボーン!!」
「学校に遅刻するぞ。俺の生徒なんだ、遅刻なんざ許さねぇからな」
無駄に偉そうに言い放つリボーンに、“ダメツナ”は笹川京子に会わす顔がないや学校に行きたくない等を喚く。
表層心理でも同じような事を思い“ダメツナ”らしく綱吉が駄々を捏ていると、我慢の限界がきたらしいリボーンに家を追い出されてしまった。
仕方なくトボトボと歩き出せば、遅いと銃で足元を撃たれ、仕方なく走り出す。
その間も表層心理を取り繕うのは欠かさない。
1度でも気を抜き深層心理を曝せば、今までの事が全て水の泡になり、これからの事に支障を来たすからだ。
思いながらも走るのは止めない。
校門が見えてきた。
まだ遅刻では無いと、足を速める。(ダメツナの足はそれでも遅いが)
そして“ダメツナ”が校門内へと足を踏み入れるまで、後3歩の時。
キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…
虚しくも鳴り響くチャイム。
え゙?と“ダメツナ”が思わずといった風に固まる。
その間にもチャイムは鳴り終り、明らかに時代違うだろとツッコミたくなるような出で立ちの風紀委員が門を閉めた。
ご丁寧にも鍵まで掛けて。
そんな風紀委員を呆然と見る“ダメツナ”。
そうして数秒経った時。
近付いてくる気配に、深層心理で綱吉はびくりと震えた。
視界の端で風紀委員が慌てて門を開ける。
((嗚呼、ああ、この気配の人は…!!))
歓喜する綱吉の心。
リボーンが比較的近くで監視しているから、深層心理内でしか想えないのがこの時ばかりは憎らしいとさえ思った。
気配が背後に来て、声をかけられる。